濱口 こんなゲームをやったことがあります。スマホを机の上に置いてみんなに見せた後、「さあ、みんな目をつぶって」と言って、その間にスマホを僕のポケットに入れておくんです。そして、みんなに目を開けてもらって白々しく何もない机を指しながら「スマホは?」と聞く。

 最初は、全員がポカンとした顔をしています。それでもしつこく「スマホは?」と問い続けると、誰かが「濱口さんはいたずらばっかりしているから、もしかして僕たちが目をつぶっている間に両面テープで机の裏に張り付けたんちゃいますか」というような意見が出てくるんです。そうすると、雪崩を打ったように参加者からいろいろな意見が出てきます。

 「スマホはある」と信じていれば、何かを考えられるんです。これはパッションを持っているかどうかということですね。どんな素敵なプレゼン資料を作っても、トークをしても、パッションがなかったら誰も説得できません。

前野 とても重要な要素ですね。

前野 隆司(まえの・たかし)<br>慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。1962年山口生まれ。広島育ち。1984年東京工業大学工学部卒業、1986年東京工業大学理工学研究科修士課程修了、同年キヤノン入社、1993年博士(工学)学位取得(東京工業大学)、1995年慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て、2008年よりSDM研究科教授。2011年4月よりSDM研究科委員長。この間、1990〜1992年カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、2001年ハーバード大学Visiting Professor。著書に『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4894519429/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4894519429&linkCode=as2&tag=techon-22" target="_blank">脳は記憶を消したがる</a>』(フォレスト出版)、『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062177420/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062177420&linkCode=as2&tag=techon-22"  target="_blank">「死ぬのが怖い」とはどういうことか</a>』(講談社)、『<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062882388/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062882388&linkCode=as2&tag=techon-22" target="_blank">幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)</a>』(講談社現代新書)、<a href="http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822249948/ref=as_li_tf_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4822249948&linkCode=as2&tag=techon-22" target="_blank">システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」</a>』(日経BP社)など多数。(写真:稲垣 純也)
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前野 隆司(まえの・たかし)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。1962年山口生まれ。広島育ち。1984年東京工業大学工学部卒業、1986年東京工業大学理工学研究科修士課程修了、同年キヤノン入社、1993年博士(工学)学位取得(東京工業大学)、1995年慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て、2008年よりSDM研究科教授。2011年4月よりSDM研究科委員長。この間、1990〜1992年カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、2001年ハーバード大学Visiting Professor。著書に『脳は記憶を消したがる』(フォレスト出版)、『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』(講談社)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書)』(講談社現代新書)、システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP社)など多数。(写真:稲垣 純也)

濱口 「なかなかイノベーションにつながらないんです」と話す人の中には、「お前、パッションないやろ」というケースはありませんか?

前野 ありますね。

濱口 何か賢いことを言うてるばっかりでパッションがなくて、能力がなかったら、もうその時点でアウトです。

前野 「パーパス」「ポテンシャル」「パッション」と出てきました。次は何が必要ですか。

濱口 どうやって目的地まで行ったらいいんかというアプローチの方法が必要です。自分がどこにいるかをGPSで知るとか、ここは安全かどうか知るためにモニターする方法など、要は目的地に向うためのプロセスがなければなりません。

前野 なるほど、見えてきました。四つ目に必要なのは、また「P」。「プロセス(Process)」ですね。