CMOSセンサーやNANDフラッシュなど、特定分野では今でも競争力を発揮する国内の半導体産業。しかし、ロジックLSI分野では海外メーカーの攻勢にさらされ、世界的な競争力は失われつつある。
前回は本コラムにて、研究者という立場から長年、半導体産業を見つめてきた東京大学 VDEC(大規模集積システム設計教育研究センター)のセンター長を務める浅田邦博教授に、半導体産業の現状と今後を語ってもらった(前編へのリンク)。後編の今回は、同氏にこの先の半導体および電機産業で重要性を増すであろうテスト分野についての見解を語ってもらいつつ、同氏が監修する「半導体テスト技術者検定」に込めた思い、意義を聞いた。なお、浅田氏にはパワーデバイス・イネーブリング協会(PDEA)が主催する半導体テスト技術者検定の教科書、問題集を監修いただいている(本コラムの詳細はこちら、PDEAについてはこちら、半導体テスト技術者検定の教科書についてはこちら、検定の問題集についてはこちら)。
――低コスト・低価格を追求したスマホのような端末が登場する中で、信頼性に対する考え方は。
浅田氏 我々が属する集積回路という分野を考えると、1980年代は高性能化を追求していた。その後、1990年代に低消費電力化というものが加わってきた。しかし、今はこれに加えて、私は学生に対して、これからは「信頼性だ」と訴えている。現代的にいえば、「Dependability(自立的・自己修復的)」という概念・コンセプトが合っていると思うが、バラつきに強い、壊れにくいといった研究にも重きを置き始めている。
――信頼性重視という考えにたどり着いた背景は。
浅田氏 簡単に言ってしまえば、これからは信頼性が大事になるということだ。実生活の中で、例えばおもちゃのようなものは問題ないが、大規模なネットワークや金融システムなど社会を支えるシステムでは、低消費電力性能などよりも、信頼性確保がより一層大事になるだろうと考えている。こうした分野では、先ほど申しあげた「Dependability」が非常に大事になってくるのだが、この実現に向けてはハードウエアだけでは成立しない。ソフトウエアも非常に重要であり、いわばソフトウエアの信頼性とDependabilityも求められるようになってくると思っている。