交流電力を、振幅や周波数が異なる交流電力に直接変換する電源回路技術。これを実現できるのが「マトリックスコンバーター」だ。

 この電源回路技術が考案されたのは1980年とかなり昔だが、実用化が始まったのは2005年と比較的最近のことである。半導体技術の進化によって、マトリックスコンバーターに欠かせない高性能な制御ICやパワーデバイスを入手できるようになったことが実用化を後押した。

 マトリックスコンバーターは数多くのメリットを持つ。従来、同じ機能を実現するには、AC-DCコンバーターとインバーター(DC-ACコンバーター)を組み合わせる必要があった。この回路構成に比べると、途中で直流を経由しないため大型の電解コンデンサーが不要になり、外形寸法の大幅な小型化や製品寿命の延長が実現できる。さらには電力の変換回数が減るため変換効率を高めることが可能になる。

 しかし、2005年に産業用インバーター装置が実用化されたものの、その後はなかなか採用する電源関連機器が登場していない。その原因には、使用する部品が特殊で、制御が複雑なためコストが高いことが挙げられる。さらに、どのような電源関連機器に採用すれば、どの程度のメリットを得られるのかが明確になっていないことも一因だろう。