2016年11月8日の投票で、ドナルド・トランプ氏が次期米国大統領に選ばれました。その前後、米国のオフィスや街中、ラジオで聞こえてきた人々のコメントや、オフィス、ジム、レストランなどで見かけた日常風景を幾つか紹介します。ヒラリー氏支持の人は割合それを大っぴらに言う一方で、トランプ氏支持の人は隠す傾向にあったようでした(以下、敬称略)。

ラジオで(投票数週間前)

・「トランプはジャスティン・ビーバーと似ている。多くの人が好きかもしれないけど、誰もそれをおおっぴらに言わない」

・「トランプを嫌いな人は確かに多いだろう。でもヒラリーを嫌いな人はもっと多いかも知れない」

 それぞれ、今回の2人をやんわりと表現していますが、しかし割と的を射ていたように思います。リスナーの手紙紹介+悩み相談みたいなコーナーでは、カップルや夫婦が別々の候補者を支持しているために、ケンカの原因になっていたり、別居にまで発展しそうだったりというケースが幾つも紹介されていました。また、トランプのモノマネに終始するコマーシャルなど、全体的にトランプの方が話題にされる頻度が高かったというのが実感でした。

ジムのジャクージにて(投票2日前)

 50代くらいの白人男性(A氏)とやはり50代くらいの白人女性(B氏)、ただし夫婦でも親しい友人というわけでもなさそうな2人がかなり熱心に大統領選について話している横で、60代くらいの黒人男性(C氏)がほとんど聞き役に回りつつ時々口を挟んでいました。たまたま居合わせただけの見知らぬ同士が特に何の気負いもなく会話を始めるというのは何も珍しくない風景ですが、こと政治に関しては普段はあまり話題には出さないものです。それでも、やはり投票直前は我慢できなくなるのでしょうか。

 ただ、3人ともはっきりと「私は××を支持している」とは言わずに、さまざまな事実や報道内容を並べる中に自分の意見を少し挟み込むような話し方です。一体誰がどっちを支持しているんだろうという好奇心もあってしばらく耳を傾けていましたが、B氏は明らかにヒラリー支持、A氏はおそらくトランプ支持だけどB氏の勢いに押されてあまり反論せず、C氏はどちらの発言にもうなずくだけで不明なまま、という結果でした。

レストランにて(投票中、開票開始前)

 1人で食事をしていた60代くらいの黒人女性の横に、後から座った50代後半くらいの白人夫婦との会話でした。やはり、ジムの3人と同じようにお互いオブラートに包んだ言い方に終始していましたが、どうやらこの3人は全員がヒラリー支持のようでした。