高収益化支援家、弁理士 中村大介
高収益化支援家、弁理士 中村大介
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 前回は、英Rolls-Royce Motor Cars社の超高級車「ロールス・ロイス」を例に、差異化とは独自性の追求であることを説明しました。いやあ、同社(以下、ロールス・ロイス)最高経営責任者(CEO)のコメント、カッコイイですよね。「私たちの顧客にはたいてい運転手がいるから(自動運転は)必須ではない」というのですから。

 自動運転という、自動車メーカーがこぞって開発しているものに対し、「必須じゃない」と言い切れる潔さは実にカッコイイと思います。「高級車メーカーだからこそ言えることだろう」という声も聞こえてきそうですが、私はそうではないと思います。

 ロールス・ロイスの顧客にも、運転手を常時雇用できない人もいるでしょう。そうした顧客層に自動運転機能付きのクルマを売れば、市場は広がるはずです。また、ロールス・ロイスとは異なる高級車メーカーであり、「ジャーマン3」と呼ばれるドイツの3社であるDaimler社Mercedes-Benz部門とBMW社、Audi社は自動運転機能の研究開発に力を入れています。

 つまり、ロールス・ロイスも自動運転を開発すれば、富裕層ではあるものの運転手を抱えられない層に対して高級車を販売することはできる。それでも自動運転にはあえて手を付けない。では、その理由は一体何でしょうか?

 私の見解は、「自動運転というテーマに投資しても勝てそうにないから」というものです。競合他社がこぞって実施し、次々と技術が確立されて知財も取得されている。こうした状況では「勝てそうにない」と考えるのは当然だと思います。要するに、「高級車メーカーだからやらない」というよりも、「勝てないからやらない」と考える方が自然なのです。