2018年に向けて何をすべきか?

 まずすべきことは、自分たちの状況を正確に把握することです。これは、あらゆる場面における「戦略」の基本中の基本です。私も、私の知る限りの有益な情報を、皆さんにコラムやセミナーなどで発信していこうと考えています。

 では手始めに、最も大事なことを伝えます。今現在の製造業において最も大事なことは、「人工知能を正しく理解すること」です。人工知能という言葉がブームになり、さまざまな企業が興味を持っています。世の中のあちらこちらで人工知能という言葉が盛んに使われています。では、人工知能をどれくらいの人が理解しているでしょうか。「人工知能=アニメや漫画に出てくるロボット」などという認識では、人工知能導入のメリットは理解できません。理解できていないのですから、企画を立てることもできません。

 また、「人工知能を導入すれば会社が良くなる」という考えも間違いです。この間違いに気付くには、人工知能について次の2つのことを理解する必要があります。

[1]人工知能はツールであり、目的ではありません。自社の課題や目標を明確にし、その上で、適切な場面で人工知能を適切に(適切=迅速かつ低リスク)利用することが必須です。
[2]人工知能はツールであり、それ単体で何かできるというものではありません。IoTやビッグデータ、ロボット、スマートグリッド、ブロックチェーンなどの技術と融合することにより、これまでにない新しい大きな価値を提供します。

2018年はどういう年か?

 私は今年、さまざまなところで、IoTと人工知能に関するセミナーや講演を行ってきました。2018年に向けて、私はIoTや人工知能、ロボット、ブロックチェーンなど、より広いテーマの講座を企画しました。

 2017年の今、IoTや人工知能は既に必須であり、当たり前の技術です。これらにロボットやブロックチェーンという技術が連携・融合することで、始めて大きな価値を生み出します。2018年は「成果を出す年である」と私は考えています。言い換えると、これまでは準備期間であり、2018年は「成果を出す」という意味での「第4次産業革命元年」だと思うのです。この1年で、急成長する企業と衰退する企業の明暗がはっきりと分かれることでしょう。

 残念ながら、私の感覚では第4次産業革命というテーマの下では、今のところ中国や米国の企業が先行しているという印象です。その原因は「経営者の判断が遅いこと」と「人材への投資が少ないこと」の2つです。これらは、従来から変わらない日本企業の課題です。そして、こうした課題を生んでいるのも「危機感の欠如」なのです。

 実は、最新の技術動向やグローバルに企業の動向を見ている人間からすれば、日本の置かれている状況は、企業レベルでも地方自体レベルでも国レベルでも、一刻の猶予もありません。既に、農業はコンピューターによって制御されつつあり、自動車は電気自動車や自動運転車にシフトしてきています。製造業の現場では、ロボットが工場を自動で動き回って物を運び、新興国でさえカスタマイズ製造という新たな試みを始めようとしています。人工知能が現場のコントロールだけではなく、需要予測や経済予測、経営分析まで始めているのです。ベンチャー企業では最新技術を活用し、小さなリスクで大きなリターンを狙う新しい経営手法が流行しています。もう待ったなしの状況なのです。

 歴史上まれに見る変革の時代である今こそ、手を取り合って世界から取り残されないために、互いに情報交換や切磋琢磨するときではないでしょうか?

 次回からは、第4次産業革命元年としての2018年における技術展望について書きたいと思います。具体的には、IoT(センシング)、ロボット・機械制御、人工知能、ブロックチェーンです。特にブロックチェーンは仮想通貨の技術と思われがちですが、製造業にとっては大きな変革を呼ぶ技術となります。今後はさらに注目して情報収集すべきです。