金融機関も注視

 IoT人材やAI人材を獲得することは、既にとても難しくなっています。特に、若い世代が減少している日本では至難の業と言えるでしょう。そのため、このままでは日本では10年以内に技術者が採用できなくなる可能性があります。

 両人材がいなければ「第4次産業革命」に適応できず、売り上げが急激に悪化する企業が続出することでしょう。実は、金融機関はこの問題を注視しています。つまり、今後は財務状況に関わらず、若い技術者を確保できずにIoTやAIに対応できない企業とは取り引きを控えるようになっていく可能性があるということです。

優秀な人材を確保する方法

 これから人材を採用する際に重視しなければならないのは、「偏差値」ではありません。出身校や出身学科ばかりを気にする企業は、近い将来淘汰されるでしょう。重視しなければならないのは、好奇心やチャレンジ精神、積極性、論理的思考力、そして問題解決力です。これらの能力は学校の成績とはあまり相関がありません。

 これからの時代を担う若い優秀な人材は、自分の価値を十分に理解しています。平凡な企業に入社することを避け、決まった型にはめられることを嫌う。大企業に背を向け、フリーランスの道を目指す。そうした若い人材が増えていくと私は想像しています。率直に言えば、報酬が違う。大企業の社員で得られる給料よりも、フリーランスの給料の方がはるかに多い時代になりつつあるのです。

 では今後、企業はどうすればよいのでしょうか? 人材を確保し、会社が存続していく方法はいくつか考えられます。有効な方法の1つは、フリーランスを雇うことです。普段から人事担当者がフリーランスの人材とコネクションをつくり、定期的に話をしておくことなども重要です。最近はフリーランスではなく、数人で起業している人たちがいます。こういったベンチャー企業は協力的なところが多いのでうってつけです。

 IoTやAI人材を獲得するもう1つの方法は、自ら育てることです。そのためには、日本企業に根強く残る年功序列的な処遇を撤廃し、能力ある人材にはそれ相応の報酬と最大限の裁量を与える新たな体制を作る必要があります。社内に抵抗勢力が現れるかもしれません。しかし、これができなければ、どれほど大きな企業であっても、優秀な人材に逃げられてしまいます。優秀な人材は日本から脱し、海外のグローバル企業にいくことでしょう。重要なのは、社長が売り上げ貢献に応じた「適正な報酬と人事体系」にするという決断です。

 ただし、若い人が本当に求めているのは「法外な給料」ではなく、「良い給料とやりがい」です。会社のトップはこのことに早く気付くことが大切です。