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渡辺史敏の「米スポーツ産業ヘッドライン」

楽天と組んだNBA、AIスピーカーやNFCで新たな顧客体験

2017/10/27 05:00

渡辺 史敏=ジャーナリスト

 ビジネスの拡大やファンの満足度向上を狙い、新しいテクノロジーやマーケティング施策を積極的に取り入れている、米国の4大プロスポーツ。中でも、先進的な取り組みに長けているのが、北米プロバスケットボールのNBAだ。

 2017年10月17日、2017-2018シーズンが開幕し、2018年4月に始まるプレーオフに向けて熱戦が繰り広げられているが、今シーズンも数々の新しい取り組みが導入されている。

 まず目を引くのが大手スポーツ用品メーカー、米ナイキ社が発売した「コネクテッドジャージー」だ。ナイキ社はNBAと8年間のパートナー契約を結び、今シーズンから独占的にユニフォームを提供している。選手用のものは空気を循環させるデザインの導入や新たな素材で、以前のものより20%軽量化が図られているということだ。

 その一方で、ファンに新しい価値を提供するのがコネクテッドジャージーなのである。一般向けに販売されている同製品のデザインは、基本的に選手が使用するのと同じ。ただジャージーの左下隅にNBAのロゴなどが入ったタグが縫い付けられており、その中に「NIKE CONNECT」というロゴも付けられている。実はこの部分にはNFC(近距離無線通信)のタグが内蔵されている。

ナイキ社の「コネクテッドジャージー」に縫い付けられたNFCを内蔵したタグ(写真:NIKE)
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 ジャージーを購入したファンが、NIKE CONNECTアプリをインストールしたスマートフォン(スマホ)やタブレットでジャージーのタグをタッチすると、アプリ専用コンテンツのロックが解除され、アクセスできるようになる。

コネクテッドジャージーのタグにスマホでタッチするとお気に入りの選手のハイライト動画などが配信される(写真:NIKE)
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 ジャージーを着用しているNBA選手など、お気に入りの選手やチーム、さらには最新の好プレーなどハイライト動画がスマホに配信される。さらに発売前の同社NBA関連製品情報やストリーミング音楽配信サービス「Spotify」を経由し、選手が聴いているプレーリストを試聴することまでできる。

 ファンが購入することが多いレプリカ・ジャージーを所有することをきっかけに新たなコンテンツを体験してもらい、選手、チームへのエンゲージメントを高め、さらなる購入につながる情報接触機会を増やす。米国のプロスポーツリーグの中でも注目の施策といえるだろう。

アマゾンのAIスピーカーで情報ゲット

 専用のコンテンツを提供する施策には、話題のAI(人工知能)スピーカー(米国ではスマートスピーカーと呼ばれる場合が多い)に関するものもある。年末に日本でも発売が予定されている米アマゾン・ドット・コム社の「Amazon Echo」が対応している、クラウドベースの音声認識AI「Alexa」の拡張機能「Alexa Skills」が、NBA全30チーム分配信されるようになったのだ。米国のプロリーグが、こうした拡張機能を全チーム分提供するのはNBAが初めてである。

 例えば、昨シーズン王者のゴールデンステート・ウォリアーズのSkillsをインストールしたAmazon Echoに、「Alexa、ウォリアーズについて教えて」と話しかければ、Alexaがチームのウェブサイトなどを検索し、最新のスコアやニュースを読み上げてくれる。こうしたAIスピーカー向けの拡張機能やサービスは、他のリーグや競技にも拡大していきそうだ。

NBA選手が製品開発に協力

 ブランドのイメージアップと製品開発の推進を同時に図ろうとしているのが、米ペプシコ社傘下のスポーツ飲料ブランド「ゲータレード」である。ゲータレードは2017年2月にNBAとパートナー契約を結び、選手の育成を目的としたリーグ、NBAデベロップメント・リーグを今シーズンから「NBAゲータレード・リーグ(Gリーグ)」に改称した。

「NBAゲータレード・リーグ(Gリーグ)」のプレスリリース(図:Gリーグ)
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 ただし、これはネーミングライツの契約に留まるものではない。Gリーグは、ゲータレードスポーツ科学研究所が協力することが発表されている。つまり、ゲータレードはGリーグに参加する選手たちに協力してもらい、より革新的な製品開発を行う。同社の責任者は広告業界誌アドバタイジング・ウィークに対し、「プロのアスリートを我々の研究室の一部のように使える」と語っている。

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