“抗議行動”が追い打ち

 では、どうして下がることになったのか。この時、大きな要因として挙げられていたのが試合前の国歌斉唱時に一部の選手が行っていた”抗議行動”だった。これは昨年、サンフランシスコ49ersに所属していたコリン・キャパニックという選手が始めた行為に端を発している。

 キャパニック選手は白人警官による黒人への暴行事件以降、黒人など人種的少数派を抑圧している国の国歌や国旗に敬意を払うことはできないとし、国歌斉唱時に起立せずベンチに座り続けたり、フィールドにひざまずくといった抗議行動を続け、他の選手にもそれが波及したのだ。これに対し、賛同する意見と反対する意見が全米で噴出し、反対する人がNFLから離れたことが視聴率低下の要因の1つになったともされていた。

 今シーズン、キャパニック選手と契約するチームが出ず、同氏自身はNFLの表舞台から姿を消しているが、8月にバージニア州シャーロッツビルで起こった白人至上主義者による集会での反対派との衝突事件もあり、選手たちの抗議行動は再び広がりを見せ、人々の関心を集めることとなった。これに対し、調査会社の米ラスムッセン・レポートは9月22日、この抗議行動を理由に「NFLを見る意欲が減った」と答えた人が34%に上ったという調査結果を発表している。

 そして9月22日には、トランプ大統領という“爆弾”がさく裂した。この日アラバマ州ハンツビルで行われた支援者集会の演説で、「選手が我々の国旗に敬意を表さない時、NFLのオーナーに『そのろくでなしを今すぐ場外につまみ出せ。クビだ』と言いたくならないか」と語ったのだ。

 これに対しロジャー・グッデルNFLコミッショナーは23日、「今回のように不和を生む発言はNFLをはじめ、卓越した試合や全選手に対する残念な尊重性のなさを示しており、われわれのコミュニティーを代表する各クラブや選手たちが誇る圧倒的な力を理解していないことも明らかだ」という声明を発表。さらに多くの選手、チーム・オーナーなどが大統領の発言に反発、失望の意を次々と公表する事態となったのである。

 そうした動きにトランプ大統領は23日、ツイッターで「NFLで高給取りという特別扱いを受けたいなら、我々の偉大なる星条旗を侮辱することは許されず、国歌斉唱には起立するべきだ。さもないと、お前はクビだ。他の仕事を探せ」を追い打ちをかけた。

トランプ大統領対NFL

 こうして全米を巻き込んだ大騒ぎとなるなか、9月24日には第3週の14試合が開催されることとなったのである。各地の試合では多くの選手が抗議行動に参加し、オーナー以下ほとんどの選手やコーチが腕を組んで連帯を示したり、ひざまずいたり、中には国歌斉唱が終わるまでロッカールームから全員が出てこないチームまであった。まさに「トランプ大統領対NFL」という雰囲気での試合開催となったのだ。

 当然この様子を放送・広告関係者は神経質に眺めていたことだろう。気になる数字だが、一番人気のサンデーナイトフットボールに関しては世帯視聴率が11.6%で昨年比で11%のダウンだった。しかし、CBSによる日曜午後のダブルヘッダー中継は4%の増加、Foxの日曜午後中継は16%の減少と、増減が入り混じる結果となったのである。

 自然の猛威に大統領の暴言と、NFLの今シーズンはこれまでになく関係者をやきもきさせる日々が続いている。