「6秒CM」を導入

 一方、ビジネス面でも大きな動きがある。NFLだけでなく、スポーツ界、テレビ、広告業界にとって大きな転換点になるかもしれないのが、NFLのテレビ中継を行っている4大ネットワークの1つ、Foxが導入した「6秒CM」だ。これまでのような30秒や15秒といった一般的なCMより大幅に短いCMを放送し始めたのである。

 昨シーズン、NFLは開幕から視聴率が下がる“異常事態”に見舞われた。一番の要因は米大統領選挙の影響とされたが、原因を巡る議論の中で多く出たのが平均3時間を越える試合時間が長すぎるという意見だった。この件についてロジャー・グッデルNFLコミッショナーは、ルールや運営面での改正などと合わせて提言したのがCM枠の削減と、さらにCMそのものの短縮だった。実際、今シーズンは1クオーター当たりのCM枠を5から4に減らす試みが行われている。

 そして5つあるテレビ中継ネットワークのうち、日曜午後の放映権を持つFoxが6秒CMの放映に踏み切ったのだ。ただ、6秒CMはいきなり人気が高いNFLに導入されたわけではなく、初めて放送されたのは2017年月13日に放送された10代の若者達が優秀な映画や音楽を選ぶ「ティーン・チョイス・アワード」の授賞式中継だった。

 この時は29秒という通常のCM枠の4分の1ほどの短いCM枠が設けられ、放送されている。まず「チャンネルを変えたり、飲食物を取りに行ったりしないように」という5秒間のメッセージが流れた後、4つの6秒CMが放送された。

MLBやMLSにも展開

 この“テスト”は奏功したようで、Foxは9月10日から特に人気の高いカードの中継を中心に、6秒CMを放送することを発表している。さらにNFLだけでなく、プロ野球のMLBや大学フットボール、プロサッカーのMLSの中継でも導入するとしている。

 では、6秒CMはビジネス的にどうなのか。6秒CMの1回の放映権料は7万5000ドル程度と見られている。これは30秒CMの放映権料が日曜午後のゲームで25万ドル、特に人気のある日曜夜の“サンデーナイト・フットボール”で60万ドルといわれるのに比べればかなり安い。

 ただ、一般的なプライムタイムの番組で相場が8万ドルから12万ドルとされていることや、NFLの人気を考えると微妙だ。さらに6秒という長さはYouTubeなどオンライン動画につけられるCMで普及しており、特に若者には違和感がないだろうという意見も多いが、その効果に疑問を持つ関係者がいるのも事実である。その点で、今回のFoxによる6秒CMは、かなりの挑戦だと言えるだろう。

中央天井部に360度巨大画面

 チーム単位でのトピックもある。まず、大きな話題となっているのがアトランタ・ファルコンズの新本拠地「メルセデス・ベンツ・スタジアム」の開業だ。16億ドルという建設費を投じてアトランタのダウンタウンに建設された、幾何学的な形状の外観が特徴の7万1000人収容のドーム型スタジアムである。

NFLアトランタ・ファルコンズが本拠地とする「メルセデス・ベンツ・スタジアム」の外観(写真:IBM岡田明)
NFLアトランタ・ファルコンズが本拠地とする「メルセデス・ベンツ・スタジアム」の外観(写真:IBM岡田明)
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 外装に大きな特徴があり、スタジアムの屋根の中央部がカメラのシャッターのように8分割された屋根で覆われており、これがスライドして開閉する。

 内装面では、中央天井部にリング状に360度画面となっている巨大ビデオ画面「ヘイロー・ボード」が吊り下げられているのが最大の特徴だ。その大きさは約5760m2にも及ぶ。さらに「メガ・コラム」と名付けられた、高さ約31m、幅約22mの柱形の巨大スクリーンも3カ所に設置されている。

メルセデス・ベンツ・スタジアムの屋内の中央天井部に設置された、360度の巨大ビデオ画面「ヘイロー・ボード」(写真:IBM岡田明)
メルセデス・ベンツ・スタジアムの屋内の中央天井部に設置された、360度の巨大ビデオ画面「ヘイロー・ボード」(写真:IBM岡田明)
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 設置されたWi-Fiのアクセスポイントは全1800基、光ファイバーケーブルの敷設総延長は4000マイル(約6400km)に及び、最新のスマートスタジアムとなっている。