米国時間の2018年5月22日、アトランタで開催されていた米プロアメリカンフットボールNFLの年次総会でチームオーナー達による投票の結果、カロライナ・パンサーズのデビッド・テッパー氏による買収が承認された。テッパー氏はヘッジファンドマネージャーで、NFLのピッツバーグ・スティーラーズの少数オーナーでもあった人物であり、承認によりパンサーズの新オーナーに就任することとなった。

NFLカロライナ・パンサーズの試合の様子(写真:NFL)
NFLカロライナ・パンサーズの試合の様子(写真:NFL)
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 今回の買収劇はスキャンダルに端を発している。元NFL選手でファーストフード・チェーンや食品ビジネスで成功し、1995年のチーム発足時以来オーナーを務めていたジェリー・リチャードソン氏に2017年12月、職場での性的差別と人種差別発言疑惑が出たのだ。リーグがこの件で調査を開始すると、リチャードソン氏はチームを売却する意向を発表。買収希望者の選定作業が開始された。

 サウスカロライナの実業家、ベン・ナバーロ氏やスポーツマーチャンダイズ企業・ファナティクスのマイケル・ルービン代表など複数の候補者が報道され、激しい買収競争が繰り広げられた模様だが、最終的にテッパー氏がチームを手にしている。

 買収額は22億7500万ドルの模様だ。これは昨年9月の北米プロバスケットボールNBAのヒューストン・ロケッツの買収額22億ドルを上回り、北米スポーツ史上最高となった。NFLに関しても、2014年にガス開発や不動産で財を成したペグラ夫妻がバッファロー・ビルズを買収した時の14億ドルを8億ドル以上も上回っている。

予想を下回る買収額

 ただ、この買収額は予想を下回ったとする報道が多い。リチャードソン前オーナーは当初30億ドル以上での売却を望んでいると報じられていた他、25億~27億ドル程度で決着するのではと言われていたからだ。米経済誌フォーブスが昨年9月に発表したNFLのチーム資産価値ランキングで、パンサーズは平均の25億ドルを下回ったものの23億ドルと判定されている。今回の買収額はそれよりも低いのだ。

 通常、成長を望めるチームの買収額はその時点での資産価値を下回ることは少ない。ビルズの場合、2014年当時の資産価値は9億3500万ドルだった。

 2017年に、NFLの総収入は140億ドルに達したと見られている。テレビ中継の視聴率は2年連続で下がったものの、その人気は圧倒的で、広告収入は逆に増えた模様だ。さらに木曜夜に行われるサーズデーナイトフットボールの放映契約をFoxと、同ゲームのライブストリーミング契約をアマゾン・ドット・コムと新たに結ぶなど、成長傾向は依然続いている。

 さらにパンサーズに関しても、2015年シーズンに優勝決定戦スーパーボウルに進出したこともあって人気は上昇しており、本拠地バンク・オブ・アメリカ・スタジアムを1億8000万ドルをかけてリノベーションし、収益力も引き上げた。そのためフォーブスは2016年から2017年にかけて資産価値が11%も上昇したと判定しているのだ。