2016年2月に開催されたNFLの優勝決定戦「第50回スーパーボウル」の舞台となった「Levi's Stadium(リーバイス・スタジアム)」。世界最高の「ファン体験」を生み出すために高度にIT(情報技術)武装された“最強スタジアム”だ。スーパーボウルを取材したジャーナリストの渡辺史敏氏に、リーバイス・スタジアムに実装されたITの全貌を報告してもらう。

 2016年2月7日に開催されたプロアメリカンフットボールNFL(National Football League)の優勝決定戦「第50回スーパーボウル」は、インターネット業界からも大きな関心が寄せられた。

 会場となったリーバイス・スタジアムは2014年にオープンしたばかりの最新スタジアムであり、カリフォルニア州サンタクララというシリコンバレーのど真ん中に立地している。そのため米ヤフー社やドイツSAP社といったIT企業が公式スポンサー契約を結んでおり、最新のIT技術が導入されている。「スマートスタジアム」というニックネームを持つほどである。

リーバイス・スタジアムで開催された、2015年シーズンの優勝決定戦「第50回スーパーボウル」の試合の様子((C)NFL JAPAN. All Rights Reserved.PHOTO BY AP Image)
リーバイス・スタジアムで開催された、2015年シーズンの優勝決定戦「第50回スーパーボウル」の試合の様子((C)NFL JAPAN. All Rights Reserved.PHOTO BY AP Image)
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 スポーツのスタジアム、アリーナにおけるIT設備の強化は、近年トレンドになりつつある。スタジアムを訪れる観客の体験(エクスペリエンス)を充実させることで、生観戦の魅力を引き上げて「ファンエンゲージメント(愛着心、思い入れ)」を高めるのに不可欠、と考えられるようになっているからだ。

 一方、スタジアム運営者やIT企業にとっては、同時に数万人がデータを通信するスタジアムは格好の“実験場”になる。通信に対する最大限の負荷テストをクリアすれば、その技術蓄積を他へ転用できる可能性がある。

 そのため米国ではここ5年ほど、スタジアムが新設されるとどのようなIT設備を備えているのかをPRするのは、NFLのみならず他のスポーツでも当然のようになっている。ただ、リーバイス・スタジアムはその中でも間違いなく突出した存在である。

試合のリプレーをスマホで視聴

リーバイス・スタジアムに設置されたWi-Fiのアクセス・ポイント((C)森岡浩志、2015年12月撮影)
リーバイス・スタジアムに設置されたWi-Fiのアクセス・ポイント((C)森岡浩志、2015年12月撮影)
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 その設備の一端を紹介しよう。リーバイス・スタジアムで、スタンドやコンコース、バックオフィスなどに張り巡らされたデータケーブルの総延長は400マイル(約644km)に達する。さらにネットワークポートは1万2000口、スタンドの天井や座席の下などに設置されたWi-Fiのアクセス・ポイントは1200基、Bluetoothビーコンも1200基設置されている。

 ネットワーク全体の伝送速度は40Gビット/秒(bps)。そのうち、一般向けのWi-Fiサービスには上りと下りのそれぞれで10Gbpsずつが確保されている。このWi-Fiサービスは、公式スポンサーであるCATV事業者の米コムキャスト社が提供し、ワイヤレスLANソリューション企業のアルバ・ネットワーク社が運営している。

観客席の上に設置されたWi-Fiのアクセス・ポイント((C)森岡浩志、2015年12月撮影)
観客席の上に設置されたWi-Fiのアクセス・ポイント((C)森岡浩志、2015年12月撮影)
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