OTT(over the top)と呼ばれるインターネットのストリーミング動画配信サービスに対する注目が高まるなか、北米の2つのプロリーグが春のシーズン開幕に先立ってアグレッシブな動きを見せた。

 まず、2018年3月8日に米メジャーリーグMLBが米グーグル(Google)傘下の「YouTube TV」とワールドシリーズの冠スポンサー契約の2年延長と提携拡大を発表した。

 YouTube TVは2017年にサービスを開始した、地上波チャンネルやケーブルチャンネルを配信するいわゆる有料ネット配信サービスだ。ABCやNBCなど米国の四大ネットワークや娯楽チャンネルの「CW」や「Syfy」など50以上のチャンネルを配信している。

グーグルが運営する、地上波チャンネルやケーブルチャンネルを配信する有料ネット配信サービス「YouTube TV」の宣伝ページ(図:グーグル)
グーグルが運営する、地上波チャンネルやケーブルチャンネルを配信する有料ネット配信サービス「YouTube TV」の宣伝ページ(図:グーグル)
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 YouTube TVは昨年のワールドシリーズで初めて冠スポンサーとなり、本塁後方やシリーズのロゴなど様々な場所にロゴを掲出した他、テレビ中継では従来の15秒、30秒のCMに加え、中継中に挿入する6秒CMを放送するなどして話題となった。ただ新サービスということもあって認知度が高くなく、費用対効果の面で疑問の声も出ていた。

 ところが今回は、ワールドシリーズに加え、シーズン全体に契約を拡大したのだ。全米向けテレビCMやMLBのデジタル資産を通じたブランディング、ソーシャルメディア(SNS)などが幅広く展開されるということだ。

若者層の開拓が狙い

 YouTube TVは、MLB傘下のMLB専門チャンネル「MLBネットワーク」の配信も開始した。加入者は同チャンネルを無料で視聴できる。さらに近く、MLBの有料ストリーミングサービスである「MLB.TV」を、追加料金を支払えばYouTube TV上で視聴できるようにすることも発表された。

 MLBのノア・ガーデン商業部門副社長は「若いファンと若手スター選手、クラブとのエンゲージメントは、YouTube TVがスポーツのナチュラルなパートナーであることを示しています。この画期的な関係を築くことができて光栄です」とコメントし、同サービスの中心層である若者の開拓が大きな狙いであることを示唆している。

フェイスブックがMLB25試合を独占配信

 MLBの新たな動きはこれだけではなかった。3月9日にはSNS最大手の米フェイスブック(Facebook)がレギュラーシーズンの25試合を独占配信すると発表した。映像はMLBネットワークが制作するものの、配信される試合は出場チームの地元地域を含め、一切テレビ中継は行われない。フェイスブックは昨シーズン、金曜夜の20試合をライブストリーミングしたが、同時にテレビ中継も行われていた。今回のように米国の主要なプロリーグがソーシャルメディアでのみ独占配信するのは初のこととなる。

 なぜ、この独占契約が実現したのか。その背景には、対象となる試合がいずれも平日午後に行われることがある。このため、日曜夜の試合の独占放送権を獲得しているスポーツ専門局ESPNよりもかなり安い3000万ドル超で契約できた模様だ。しかも、この契約には独自ハイライト番組の配信なども含まれている。

 フェイスブックのグローバル・スポーツ・パートナーシップ担当のダン・リード氏は「コミュニティーと会話は、野球とフェイスブックに共通の核です。MLBネットワークの革新的な配信は試合にインタラクティブでソーシャルな要素をもたらすでしょう」と語り、SNSでの配信の効果を強調している。