全米最大のスポーツイベントであるプロアメリカンフットボールNFLの「スーパーボウル」。米国時間の2018年2月4日、第52回大会が開催されたのは、ミネソタ州ミネアポリスにある「U.S.バンク・スタジアム」。本拠地として使用するミネソタ・バイキングスと州、郡などにより11億ドル余りをかけて建設し、2016年にダウンタウンにオープンしたスタジアムだ。

第52回スーパーボウルでのWi-Fiの利用状況(図:エキストリームネットワークスが作成したインフォグラフィックス)
第52回スーパーボウルでのWi-Fiの利用状況(図:エキストリームネットワークスが作成したインフォグラフィックス)
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 同スタジアムも、最新の通信施設が充実した「スマートスタジアム」の一つとして知られている。場内にはネットワーク機器大手の米シスコシステムズによってWi-Fiネットワークが構築・運営されている。ホットスポットの数は1200基。ファンやメディアが快適に使用できる環境が整えられている。

試合前のデータ転送が急増

 今回で5年連続でスーパーボウル会場のWi-Fi使用状況を監視・分析した米エキストリームネットワークスの発表によれば、試合当日のデータ転送量は16.31テラバイト(TB)に上った。これは前回の11.8TBを大きく上回り、5年連続で記録を更新した。スタジアムにおけるWi-Fi需要が伸び続けていることがわかる。また、ピーク時のデータ転送速度は7.867Gbps(ビット/秒)に達したという。

 興味深いのは、全体の転送量のうち、試合前が7.7TBで、開始後の8.6TBに迫る勢いだった点だ。前回がそれぞれ2.9TBと8.9TB、前々回がそれぞれ3.42TBと6.73TBだったことを考えると、今回は様相が大きく違った。

 これは試合開始時の気温が-16℃と極寒の中での開催で、試合開始前、屋内型の同スタジアムに“閉じ込められた”ファンが多く、ネット使用の需要が伸びたと見られている。前回、前々回はテキサス州ヒューストン、カリフォルニア州サンタクララという比較的温暖な土地での開催で、スタジアムの周囲には様々な屋外アトラクションもあり、観戦者は試合開始直前までそれらを楽しむこともできた。

 Wi-Fiの展開は、こうした気候条件も考慮しなければならないようだ。一方で、もし屋外型スタジアムで雨中の開催になった場合は、端末が雨水で故障することを恐れ、ネット利用に対する意識が低下する可能性もある。

試合前のデータ転送が急増

 Wi-Fiを使用した人数は4万33人に上った。これは全入場者数6万7612人の59%に当たる。前回の第51回の49%と比較すると10%の伸びだ。第50回が42%、第49回が25%、第48回は16%だった。第50回から大きく伸びたのはWi-Fiの普及もあるが、ここからスマートスタジアムを意識しての整備が実質的に始まり、”使える”環境になった点が大きい。

 一方、同時にWi-Fiを使用した人数のピークは2万5670人で、前回の2万7191人より微減した。前回の会場だったNRGスタジアムが約7万5000人収容と今回よりも大きかったことが要因となっていると見られる。

 では、データは何に使用されたのか。最も多かったのはクラウドストレージの7.8TBだった。2位はソーシャルネットワーキングで2.6TB。前回よりも65%増となった。中でも、最も使用が多かったソーシャル・アプリはフェイスブック(Facebook)で1.3TB。表示期間を限定して動画や画像をやりとりできるスナップチャット(Snapchat)が1TBでそれに続き、ツイッター(Twitter)が257.2ギガバイト(GB)、インスタグラム(Instagram)が34.2GBだった。10代を中心に人気が高いスナップチャットの勢いが、現在も続いていることを印象づけた。