全米向けのテレビ中継は4大ネットワークの一つ、FOXが行った。試合が決着した東部時間午後10時から10時30分にかけて、52.1%という最高視聴率を獲得し、占有率は実に74%だった。
そんなテレビ中継において自社のテクノロジーを積極的にアピールしていたのが、パソコン向けCPUで市場を寡占する、米半導体大手のインテルである。
38台の5Kカメラを設置
まず紹介するのが、今回導入された「Be the Player」と名付けられた画像技術。これは試合中に選手が見ていた視界を仮想的に生成するというもの。例えば、あるプレーでパスを投げようとしたクオーターバック(QB)が見えていたであろう光景を”バーチャルカメラ”の画像として再現することができる。インテルは前回のスーパーボウルや2016年のMLBオールスターゲームの中継でプレーの画像を視点を移動させながら表示する「360 リプレー」という技術を導入していた。これは元々、イスラエルのスタートアップ企業、リプレー・テクノロジーが開発した「FreeD」と呼ばれていた技術だ。スタジアムのスタンドにフィールドに向けたカメラをぐるりと1周分設置し、各カメラが撮影した画像をつなげ、さらに補完画像を生成することで視点を移動するような動画を作成できるというものだった。
インテルは同社を2016年3月に買収、シーズン中に15のスタジアムでテストを行うなど開発を重ねてきた。通常のようにカメラの位置に固定されず、選手の視界というバーチャル画像を生成できる「Be the Player」を完成させた。
今回のスーパーボウルでは38台の5K(フルHDの5倍の解像度)カメラが設置され、データ伝送のために総延長5マイル(約8km)の光ファイバー網が敷かれたということだ。データ量も膨大で15~30秒の映像クリップ1つで1TB(テラバイト)に達するという。コントロールルームにはインテルのプロデュサーが6人詰めて作業にあたった。
ブレイディ氏のCM起用で賭け
実際の映像だが、確かにこれまでにないものとなっていたが、事前には20プレー前後で実施されるとされていたものの、実際に確認できたのは前後半1回ずつだった。効果的に見せようとすると20秒以上の時間が必要で、スピーディーな試合展開のなかでは表示するタイミングが難しいのかもしれない。また、日本で放送された国際映像では同技術の画像は使用されなかった。
そんなBe the Player導入の一般へのPRにあたって、インテルはある”賭け”に出たことも注目された。2017年1月12日に、同技術の中継への導入と試合中継で流される同技術をアピールするCMを発表したのだが、そのCMにペイトリオッツのQBトム・ブレイディ氏を起用したのである。
ペイトリオッツが無事、スーパーボウルに進出しただけでなく、優勝を飾り、ブレイディ氏が歴代最多となる4回目のMVPを受賞したことに広報担当者は快哉(かいさい)を叫んだに違いない。