■親和工業株式会社の概要
【設立】1974年
【資本金】3500万円
【代表】代表取締役 秋元 勇人
【社員数】60人
【住所】埼玉県川口市西川口6-7-14
【得意な微細加工】高精度プラスチック成形、成形金型設計

医療業界に信頼される精密成型品の駆け込み寺

 親和工業には、医療業界を中心とした企業の開発設計者や大学の教授、病院の医師から、樹脂製品の開発や設計改良についての相談が頻繁に寄せられています。これらの相談に対して、同社は2人の特級プラスチック成形技能士を中心に3D-CADや流動解析を駆使し、設計と成形両方の高度な技術によって開発段階から製品化までを通した技術支援を提供しています。特級プラスチック成形技能士は、日本全国でも100人程度しか取得していませんが、同社には2人が在籍しています。

 具体的な事例としては本コラム第26回でも紹介した、抜きテーパーが0°で長さ125mm、⌀0.6mmで駒割りの線やボイドのない長尺極細成形品(麻酔針の芯)、自由曲面形状であってもパーティングラインのズレ5μm以下の位置の高精度成形品、抜きテーパー0°で肉厚が0.4mmの極薄チューブ状の成形品などが挙げられます。

パーティングラインが分からないABS製シリンジ

 図1に示すABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)製シリンジは、人の体内に薬を充填するのに使います。使用時に人体の粘膜に接触する可能性もあるため、手で触ってもパーティングラインが確認できない精度、すなわちパーティングラインにおける食い違いを5μm以下にすると求められた成形品です。

 一般的にパーティングラインでのズレが5μm以下になるよう仕上げることは難しく、そのズレは成形後にバフ研磨での表面仕上げで補正するのが一般的です。しかしバフ研磨を行うと粉塵が発生し、製造現場や製品自体の衛生面の悪化につながります。研磨工程の後に洗浄工程が必要になるなど、製造工程が増え製品自体のコスト増につながってしまいます。

 しかし同社の成形技術を以てすれば、高精度で衛生的に製品を製造できます。同時に、製造工程数を抑えることでコストも削減できるのです。

図1 自由曲面形状で研磨レスのABS製シリンジ
図1 自由曲面形状で研磨レスのABS製シリンジ
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