ラフな公差か厳しい公差か

[1]普通寸法公差のようなラフな公差を持つ寸法の場合は、公差を外れても、一般に上位システムへの影響がないか、あっても軽微で、特採にできる可能性が高い。特採が設計思想と矛盾しなければ、恒久対策として設計変更も選択肢となり得る。

[2]寸法に直接公差が付いているような厳しい公差を持つ寸法の場合は、公差を外れると上位システムへ影響する可能性が高い。従って、さらに次の2つのケースに分けて対応しなければならない。

①上位システムの目標値が、安全率の限度を確保できる場合。
 このケースは、公差を外れた最大値でも上位システムの目標値を満足できるので、この最大値内という条件付きで特採にできる。これは安全率に余裕がある場合に適応可能となる。

②上位システムの安全率が必要限度を割り込む場合
 このケースは少し厄介だ。先に述べたが、公差は上下限いっぱいに振れても、必ず上位システムの目標値を満足するように設定される。この意味するところは、例えば、組み付く相手側の部品が公差中央値に加工されていれば、上位システムの目標値を満足する可能性があるということだ。

 つまり、公差から外れる大きさで、上位システムの目標値を満足できる場合と、そうではない場合が生じる。すぐに公差内のものが生産できないなら、期間限定で特採する。その間は、上位システムが目標値を満足しているか、抜き取り検査の頻度を増やしたり、全数検査を行ったりする管理の強化が必要だ。

 ここでは部品の寸法の特採を、上位システムの目標値への影響として取り上げた。だが、実は特採品が市場に出てからの耐久劣化を含めた影響も考えなければならない。特採すると、上位システムの担当部署が耐久評価をし直す必要があったはずだ。だからこそ、例えば「目標期間の10年間は耐久目標値を満足する」などと判断できたのである。

 特採の判断は簡単とは限らない。多くの時間と工数がかかるのである。だが、特採を一切認めないとすると、ものづくりは成立しなくなる。根拠をしっかりと踏まえた特採の判断を行っているか、一度振り返ってほしい。