大学スポーツをプロフィットセンターに

 日本においてスポーツビジネスをカルチャーとして根付かせるためには、これまで学校の中で「コストセンター」だったスポーツを「プロフィットセンター」に変えることが重要です。

 米国の大学スポーツに関連したビジネスの規模は、日本円にすると1兆円ほどと言われています。だとすれば、経済規模から単純計算すると日本では3000億円のポテンシャルがある。いきなりその水準になることはないとしても、1000億円規模になってもおかしくはないはずです。

 大学はアカデミックの分野、ドームはマーケティングの分野においてそれぞれ強みがあります。お互いに強さを出し合い、コラボレーションすることで「1+1」が「3」にも「4」にも、時には「5」にさえなってしまう。まさにベストインクラスという考え方になります。例えば、ブランディングについて考えただけでも、多くの学校で運動部ごとにバラバラなのが現状です。ユニフォームのチームカラーもバラバラならば、ロゴにも統一感はない。学校全体のスクール・ブランディングにつながっていないわけです。ユニフォームのチームカラーやロゴを統一してブランド力を上げるといった、ビジネス界の常識を導入していくだけでも、大きな効果があるはずです。

 学校のブランド価値を高めると同時に、スポーツ用品メーカーのビジネスにとっても大きな価値になります。大学とメーカーの双方のブランド価値が高まり、収益を上げるサイクルを創出してスポーツの産業化を達成することで、教育現場の環境を改善するために分配できます。潤沢な研究費を用意できればノーベル賞受賞者を教授として招聘できるかもしれません。世界の一流研究者から高度な教育を受ける機会があるとなれば多くの学生が殺到することでしょう。大学の評判、評価が上がればそれはそのまま新たな大学の収益につながる。こんな好循環を実現できるのではないでしょうか。実際に米国ではこの好循環の入りの部分をスポーツが担っているので、「スポーツは大学の玄関」と言われています。

 次回は、大学スポーツと並んで日本のスポーツビジネスの課題になっている「スタジアム・アリーナ改革」について話をしたいと思います。

(写真:ドーム)
(写真:ドーム)

(談、構成は上野 直彦=スポーツジャーナリスト)

――次回に続く――