厳しい経済環境が続く中国で、30%成長を目指す日本企業がある。オムロンの自動化・制御機器部門の中国法人、欧姆龍自動化(中国)有限公司(OMRON Industrial Automation (CHINA)社)だ。同社の松山信也氏(董事 副総経理 企画統轄部 統轄部長)は、「景況の厳しさは変わらないが、我々の事業にとってはチャンス」と意気込む。松山氏に、同社の事業戦略について聞いた。(聞き手は、田中直樹=日経エレクトロニクス)

――2016年度の事業目標は。

欧姆龍自動化(中国) 董事 副総経理 企画統轄部 統轄部長の松山信也氏
欧姆龍自動化(中国) 董事 副総経理 企画統轄部 統轄部長の松山信也氏
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 スマートフォンを中心とするデジタル機器や、そこに搭載される電子部品の製造メーカーを対象とするビジネスで、2016年度は30%以上の成長を目指します。マクロ的に見ると、2017年度までは非常に厳しい景況が続くと予測しています。しかし、我々の事業にとってはチャンスがあると考えています。中国で製造する製品の“高性能化”や“知能化”へのニーズが高まっているからです。顧客からの具体的な相談も増えています。

――なぜ、チャンスだと考えているのですか。

 競合他社にはマネできない、独自の強みを持ったからです。その強みとは、センサーやコントローラー(制御機器)、ネットワーク機器だけでなく、ロボットという高度なモーションコントロール技術まで含めて顧客に提案できることです。ロボットまで含めてコア技術をそろえられる制御機器メーカーは、他にないと思います。

 これまでは、生産ラインを構築する顧客が、必要なロボットを専業メーカーから仕入れていました。また、センサーや制御機器は別途、我々などから調達していました。これらをエンジニアリング会社が連携させて、動かしていたのです。しかし、このような場合、生産工程の精度向上に限界がありました。異なるメーカーから調達したロボットと制御機器やセンサーを連携させるための、調整や擦り合わせが難しいからです。

 我々は、センサーや制御機器に加えてロボットを手に入れたことで、すべてを顧客に提供できるようになりました。顧客の生産ラインに対して“一連のソリューション”を提供できます。この結果、生産ラインにおけるネットワークの通信方式が共通化されたりすることで、製品の品質問題が起こったときに対応が取りやすくなります。

 これは、製品の品質の安定化や製造歩留まりの向上に貢献します。例えば有機ELディスプレー(OLED)のような新技術を導入した製品の製造では、どうしても品質が不安定になります。品質問題が起こったときに対応が取りやすいというのは、非常に価値があると考えています。

――ロボット事業は、どのようにして手に入れたのですか。

 2015年度に、2件のM&Aを成功させました。1つは、世界有数の産業用ロボットメーカーである米Adept Technology社を買収したこと。もう1つは、高度なモーション制御技術を持つ米Delta Tau Data Systems社の買収です。

 特に中国では、ロボットの需要が急増しています。中でも、スマートフォンや関連電子部品の製造工場では、その傾向が顕著です。背景には、人件費の高騰があります。「2020年には工場をほぼ無人化したい」という極端な要望もたくさん届いています。政府は数年前から工場自動化の政策を打ち出していましたが、ここに来て企業の動きが具体化してきました。工場自動化の分野には、大きなビジネスチャンスがあります。