2016年6月、東海旅客鉄道(JR東海)は新幹線車両を13年ぶりに全面改良すると発表した。現行新幹線車両「N700」系に代わる新しい車両の名称は「N700S」(図1)。“S”は、「最高」「至高」という意味の「Supreme(スプリーム)」を表す。現在はまだ試験車両の製作段階だが、2018年3月には完成する予定だ。この試験車両で数年かけて新技術を試験し、2020年ごろに量産車としてデビューさせることを目指している。
このN700Sで、いよいよSiCパワーデバイスを車両に搭載する。これまでも、パワーデバイスの発展と共に車両技術は進化してきた。ここでは、車両技術全体の進化の中でパワーデバイスがどのような役目をしてきたかについて、車両の技術開発や開発設計に携わってきた立場から解説する。加えて、SiCパワーデバイスを使った車両技術をどのようにN700Sに結実させたかということについて説明する。