次のような質問が私の事務所に寄せられました
【質問11】
A4判で6枚の技術論文を作成し、社内技報として出稿しました。ところが、社内編集部員から、「内容はOKですが、アブストラクト(要旨)として200文字にまとめてください」とのことでした。そこで200文字にまとめて提出したところ、「本文の主要部分が逸脱している。何をやってるんだ!」とすごい剣幕で怒鳴られました。200文字に要約なんて無理です。それとも、主要部分を外さずに、短文にまとめるコツがあるのでしょうか? 教えてください。
この質問に対する私の回答はこうです。
【回答11】
誰でもそのような経験をします。「200文字にまとめて」と言われると、「短くしなければ」と、決められた文字数にまとめることばかりが気になりますよね。その結果、読み手が興味を引く大事なポイントを外してしまいます。そこを外さないコツですか? 実は、技術者向けに短文にするコツがあるんです。それを解説しましょう。
技術者は長い論文を書くときがあります。以下のような場合です。
①社内技報(社内における技術開発や研究テーマの紹介)
②特許出願書
③学会への投稿
④社内における昇格試験の論文
⑤社外の資格試験
原稿用紙5枚ぐらいの文章を書き上げたときのアブストラクトの一例として、200文字以内でまとめなければなりません。このとき、200文字という文字数ばかりが気になり、肝心要(かんじんかなめ)の主張が大きくずれてしまったなどというのは、ほとんどの人が経験している失敗だと思います。
ここから先は、前述の要旨や「はじめに」などと称する書き出し部分について、読者の興味を引く魅力的な「書き出し」の作成方法を解説します。
書き出しで勝負あり
本コラムの第10回で解説したタイトルで聴衆や読者を魅了(みりょう)できても、気を緩めてはいけません。聴衆や読者は「次」を期待しています。「次」とは「書き出し」です。ここでも読者を魅了しましょう。図1は、第5回でも掲載しましたが、この図における書き出しとは、次の部分に相当します。
[1]8段論法では、「テーマ選定の理由」と「現状把握」の部分
[2]4段論法では、起承転結の「起」の部分
[3]3段論法では、「序論」の部分
この部分でも「勝負しろ!」というのが今回のテーマです。かつては格好良く体裁を整えるだけの部分だったのですが、今回は違います。まずは通常の書き出しの例を挙げましょう。