前回では、日本において、ベンチャー起業家に対して投資家が個人保証を求めるという不適切な契約が結ばれる実情を紹介した。今回は、それをもたらす誤解を解いて、ベンチャーらしい融資スタイルと対比したい。

投資とローンは違う

 ベンチャー企業を成長させるには、適切な融資条件が重要である。日本において、不適切な投資条件がまかり通っている原因は、大きく2つあると考えている。1つは、「投資」と「ローン」という、根本的に異なる2つの融資方法を混同していることにある。特に、金融分野に明るくない技術者が起業した場合は、ローンと投資が混ざった契約条件を飲んでしまっているのではないか。

 ローンの場合は、借りた側に返済が義務付けられている一方で、金利が高くても貸し出した側が得られる利益は限られている。つまり、貸し出した側にとっては、ローリスク・ローリターンになる。

 投資の場合は、資金を受けた側に返済義務がないものの、株式上場や大手企業への売却によって投資家が得られる利益は莫大なものになり、上限はない。つまり、ハイリスク・ハイリターンである。成功したベンチャーに初期段階で出資した投資家は、数年後に数千倍のリターンを手に入れることができる。

 そんな数千倍の金利のローンはない。起業家の個人保証つきでベンチャーに投資するのは、投資家だけがローリスク・ハイリターンとなり、不公平極まりない。