数値で見るメガリコール

 近年の製造業の環境変化で顕著なものの1つに、自動車のリコールの対象台数が多い「メガリコール」が挙げられる。リコール件数は増えていなくても、リコール1件当たりの対象台数が大きく増えている。図1は、国土交通省が発表したリコール件数と対象台数の推移をグラフ化したものである。

 2005(平成17)年以降、年間リコール件数は約300件で横ばいであるが、対象台数は急増傾向だ。例えば、2011(平成23)年では約300万台であったのに対し、2015(平成27)年では約1900万台に達した。この数字だけで見ると6倍以上の差がある。これが「メガリコール」を数値で説明したものといえるだろう。

図1 リコール件数、台数の推移
図1 リコール件数、台数の推移
国土交通省のデータ( http://www.milt.go.jp/jidosha/carinf/rcl/data_sub/data004.html )を基に筆者作成。
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 特に2005年(平成27)年のリコール件数 増加は、自動車メーカーと、部品メーカー双方で進展する部品の共通化が背景にあるとされる

・自動車のグローバル競争が過熱し、開発期間の短縮、コスト削減、それを前提とした品質保証が要求される。

・自動車メーカーは、「モジュラー設計」(プラットフォームの共通化、標準モジュールの組み合わせ、個別部分の追加開発により、市場ニーズの多様化への対応と、開発期間の短縮や部品種類の削減を両立する設計思想)や「部品共通化」に取り組んでいる。

・部品メーカーも、複数自動車メーカーへの販路拡大と、それらからの要求に対応するために、メーカーを横断する共通化部品・モジュールの開発、納入に注力する。

・しかし、仮に共通部品・モジュールに不具合が発生すると、それを利用する多くの車種に同時に問題を発生させる。

* 清水直茂, 「巨大リコール時代の部品メーカー」, 日経オートモーティブ2015年9月号による。

 このようなことがメガリコールを発生させるメカニズムとされている。特定メーカーだけで発生する問題ではなく、業界の構造的な問題であり、今後も発生する危険性が高い。