「日経デジタルヘルス 特別編集版 2018」が完成しました。

今回の表紙カラーは秋らしい色に
今回の表紙カラーは秋らしい色に
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 日経デジタルヘルスが2018年5~6月に開催した座談会「働き方改革が切り拓く、ソーシャルホスピタル実現への処方箋」を基に、全34ページの冊子にまとめました。今回の座談会を通して浮かび上がったのは、「医療業界は特別ではない」というメッセージです。

 座長を務めた京都大学医学部附属病院 医療情報企画部長 病院長補佐 教授の黒田知宏氏は、座談会を振り返ってこう語ります。「もちろん、どんな業界でも特別なものはあり、医療業界であればそれは『患者のため』などの文脈で語られる。しかし実際には、『書類の山が…』といった話が課題として挙がり、結局は『それは医療業界に限った話ではないよね』というオチがある」。

 実際、座談会の中では書類作業の負荷に関する発言が、医療現場に携わるパネリストから相次ぎました――。詳細は、本特別編集版の「総論」にまとめています。

 今回の特別編集版は、2018年10月17~19日に開催する「デジタルヘルスDAYS 2018」内のデジタルヘルスシアターでの配布を予定しています。気になる方は、ぜひお手に取ってみてください。

「日経デジタルヘルス 特別編集版 2018」編集後記

本音の議論
 本音と建前を使い分けてきた医療業界が、改革を迫られている――。座談会後、座長の黒田先生にインタビューした際に飛び出したこんな発言が、印象に残っています。応召義務に象徴される24時間対応と8時間労働の両立は、これまでは本音の部分で調整されてきましたが、今ではこの2つの建前が一致しない事実が露呈してきたという話です。似たような本音と建前のせめぎ合いは、多かれ少なかれあらゆる業種・業界の仕事にも存在しているのかもしれません。ただし、その不一致を解消するためには、少なくとも本音での議論を重ねていくことが不可欠です。今回の座談会では、まさに本音の発言をしていただきました。パネリストのみなさまに感謝です。(小谷)

“持ちつ持たれつ”の精神を
 「人に迷惑をかけないようにしなさい」。日本ではこうした教えが当たり前のようになっています。一方、とある国では、「あなたもきっと迷惑をかけるのだから、人のことを許してあげなさい」と教えられるそうです。今回の座談会で議論が交わされた「タスクシェア」について考えるとき、この言葉が頭をよぎりました。日本の言葉でいえば、“持ちつ持たれつ”でしょうか。
 医療現場の業務をシェアすることは容易ではなさそうですが、今回の座談会ではタスクシェアに前向きな印象も抱きました。無駄をなくし、ICTなどを適切に活用すれば、誰かに負担がかかりすぎることは防げるかもしれない―。そんな円満なタスクシェアの実現を望みます。(伊藤)

“医療の世界は特別だから…” が見直されるとき
 日本医療情報学会(JAMI)の大会でお会いする先生方は、臨床医としての業務をこなしながら医療情報部門で病院情報システムの企画・開発・運用に携わっている方も多い。外来診療部門の先生は夜勤もあれば、中には病院情報システムのトラブル対応で夜中でも呼び出される先生もいると聞きます。
 医師の働き方改革が議論され、応召義務の見直しも着手されました。止めることのできないシステムの運用業務を一部の職員に負わせる体制も見直されるべきではないでしょうか。同時に、医療情報部門職員の地位向上も図られるべきだと常々考えています。(増田)