日本の自動車産業が絶好調である。足元では、ここ2~3年にわたる為替水準の円安化が一段落しつつあるにも関わらず、日本の自動車メーカーは引き続き高い利益水準を保っている(図1)。私自身子供の頃より、自動車メーカーのエンジニアであった父から「日本はものづくりを基盤に付加価値を創出して輸出により豊かになった。この構造をどうやったらもっと強くできるか考えなさい」と繰り返し聞かされて育ってきた。

図1:世界の主要自動車メーカーの営業利益率
図1:世界の主要自動車メーカーの営業利益率
出典:各社財務情報よりADL分析
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 リーマンショック直後の自動車業界が落ち込んだ際には、自動車産業一本足からの脱却が真剣に議論された時期もあったが、その後の自動車産業を取り巻く経営環境の改善とかつての稼ぎ頭であった電機業界の構造改革が長引く中で、自動車産業への依存度はむしろ高まっているように見える。そのように考えると、「今の日本の自動車産業の好調は、一過性のものなのか、それとも中長期的な経営環境から見て必然性・持続性の高いものなのか、死角はないのか」という問いは、自動車産業に直接・間接に関わる立場の方以外にも広く興味と影響があるテーマであろう。

 本連載ではこうした問いに答えるために、自動車業界の中で起こっているミクロな商品・技術の変化のみならず、自動車業界を取り巻く各国の産業構造(セミマクロ)、さらにそもそもの各国の思惑やグローバルにおけるポジショニング(マクロ)にまで立ち返ってその優位性の持続可能性を検証していく。第1回として、マクロな世界経済における日本の位置付けから見た競争環境について考察したい。