このコラムでは、「リアル開発会議」が提案する用途開拓プロジェクト「小型エネルギーデバイスの用途開拓」のマッチング会について紹介する。具体的には、村田製作所の小型エネルギーデバイスである。蓄電デバイスの使い方の常識を覆すタフな部品として、大きな電流を瞬時に放電したり、わずか数分間で満充電に急速充電したりできる上、安全で寿命が長く、使い勝手がいいのである。

 世界がこのデバイスに注目している。ドイツのテクノロジー系媒体であるElektronik Magazine誌がパワーサプライ部門でプロダクトアワードの1位に選出した。

 このデバイスの利用シーンは、いくつも想定できる。まず思いつくのは、微小な電力を発電するエネルギーハーベスティングとの組み合わせだ。発電量が大きく変動する小型の太陽光発電や振動発電などの発電デバイスに接続すれば、微小な電力を確実に充電し、安定的な電源として利用できる。これからのIoT時代のセンサーネットワークを構築するには、必須の蓄電デバイスといえそうだ。

 また、商品企画に苦しんでいる担当者は、発想の転換に、この小型エネルギーデバイスを使ってみてはどうだろうか。例えば、パソコンで1分充電すれば使える小型のレーザーポインターや、数秒間振ると使えるリモコンスイッチなど…。ちょこっと充電すれば、すぐに使える新商品を続々と企画できるはずである。高級玩具もあるかもしれない。わずか1分間の充電で数分間飛ばせる、手のひらよりも小さい超小型のドローンも商品化できそうだ。

 このほかにも、非常に短時間ではあるものの無停電電源装置、いわゆる“マイクロUPS”としての利用方法もあり得るだろう。POS端末やハンディタイプの医療機器などでは、バッテリーの充電量低下による電池交換を余儀なくされる。この際、システムをシャットダウンしたり、スリープモードにしたりする必要があり、かなり面倒だった。

 だが、このデバイスを組み込んで、電池を交換する間だけシステムを起動し続けられる電力を供給すれば、電池交換の際にも機器をこれまで通り利用できる。データを常に取り続けなければならない機器や、システムの起動/停止に時間がかかる機器に応用できれば、その商品性は高まるだろう。

 このような使い勝手のいいエネルギーデバイスの登場により、新たな商品を次々と生み出せるはずである。