用語解説

 芳香族ポリアミド繊維(aromatic polyamide fiber)のこと。アラミド繊維(aramid fiber)の名は米連邦取引委員会(FTC)が名付けた。

 アラミド繊維は,骨格となるベンゼン核が直線的に並んだパラ系と,ジグザグ状に並んだメタ系の2種類に大別できる。パラ系は高強度で高弾性,低伸縮などの優れた特性を示すことから,先端複合材料分野に使われる。一方のメタ系は耐熱性や難燃性に優れる特徴から産業資材分野で用途が広がっている。

商品化第1号は「ケブラー」

 パラ系アラミド繊維の代名詞的な存在が米Du Pont社の「ケブラー」である。1960年代に米国で開発され,1991年からは日本での生産も始まり,日本,アジア諸国を含めて世界的に普及している。

 「ケブラー」に続いて,同種のパラ系芳香族ポリアミド繊維の開発が進んだ。帝人の「テクノーラ」やオランダ・アクゾ社が開発した「トワロン」である。また,メタ系としては,帝人の「コーネックス」が製品化されている。

供給・開発状況

2006/10/26

全日空,欧米路線で使用する
ケブラーFRP製コンテナを200台導入

 全日本空輸は,軽量型コンテナを200台導入し,2006年冬ダイヤから使用する。素材を従来のアルミニウム合金製から底板,骨格をのぞく外壁部分をアラミド繊維(ケブラー)で強化したプラスチック製に,開閉部分をキャンバス素材にそれぞれ変更した。これで質量は71kgと,アルミ製コンテナの99kgに対して28kg軽量化した。 1機あたり最大では28×44=1232kg軽量化でき,東京=サンフランシスコ線片道で約3470L(ドラム缶約17本分)の燃料削減,約8550kgのCO2排出量を削減できる。

ミズノ,カーボンとアラミドによる
四軸織物を採用した卓球用ラケットを発売


【図1】カーボン繊維とアラミド繊維による四軸織物を採用した卓球用ラケット「World Champion」 (クリックで拡大表示)

 ミズノは,四軸織物を採用した卓球用ラケット「World Champion」を2006年2月20日に発売する(図1)。反発性の高いカーボン繊維と振動を吸収しやすいアラミド繊維を使った。ボールがラケットに当たったときの反発性が高いが,その一方で,打球感がやわらかいという。価格は1万2600円(税込み)。

 四軸織物は,明大(本社岡山県倉敷市)が開発したもの。経(たて)/緯(よこ)糸に加えて斜め2方向にも糸を加えた構造で,繊維の方向を替えることで特性を変化させられる。

東レ・デュポンとKubota Research,
近赤外線で硬化するアラミド繊維複合材料を開発

 東レ・デュポンと米Kubota Research Associates,Inc.は,熱可塑性樹脂を含浸したパラ系アラミド繊維と近赤外線吸収剤を含む不織布を積層した新しいタイプの長繊維強化複合材料「RUBA-C」を開発,「IPF(国際プラスチックフェア)2005」(2005年9月24~28日,幕張メッセ)に出展した。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のように大掛かりな加熱炉が必要なく,成形サイクルタイムも短いことから,屋根材などの自動車外板分野への採用を狙う。2005年内にサンプル出荷する予定。

 パラ系アラミド繊維「ケブラー」の織物に含浸する熱可塑性樹脂は,ポリイミド,ポリプロピレン,ナイロン,ポリビニルブチラールなど多様である。樹脂を含浸した織物(プリプレグ)を多層化するが,層間にポリプロピレンに炭素系の近赤外線吸収剤を混ぜ込んだ不織布「スドー不織布」を挟んで,近赤外線ビーム(800 nm~2000 nm)を照射して加熱溶融させて複合材料を製造する。4層までは一回の照射で硬化できる。それ以上多層化する場合には,複数回照射する必要がある。

東北パイオニア,アラミド繊維による
四軸織物を使ったスピーカ用振動板を開発


【図2】アラミド繊維による四軸織物を使ったスピーカ用振動板(クリックで拡大表示)

 東北パイオニアは明大(岡山県倉敷市)と共同で,アラミド繊維による四軸織物と呼ぶ特殊な織物を使ったスピーカ用振動板を開発した(図2)。近く,自動車用のスピーカに適用するという。従来の二軸織物で作ったスピーカ用振動板は,共振が出にくいなどの特徴から広く使われているが,強度が0°方向と45°方向で異なるという課題があった。四軸織物は,縦糸と横糸のみで構成する通常のニ軸織物に対して,斜め方向の糸を2本交差させた織物で,強度のバランスが均一になるという特徴がある。

ニュース・関連リンク

全日空,欧米路線で使用するケブラーFRP製コンテナを200台導入

(Tech-On!,2006年10月23日)

ミズノ,カーボンとアラミドによる四軸織物を採用した卓球用ラケットを発売

(Tech-On!,2006年10月23日)

【IPF】東レ・デュポンとKubota Research,近赤外線で硬化するアラミド繊維複合材料を開発

(2005年9月26日)