地域間連系線とは、「送電網の広域運営」で解説したように、電力会社の系統を相互に接続する設備である。連系線の強化とは、送電できる運用容量注1を大きくすることである。これにより、地域単位での電力不足を解消し、再生可能エネルギーの導入を促進し、電力取引を活性化させるなどのメリットが得られる。

注1:連系線を通じて送電できる電力量は、送電線の熱容量や、系統安定度、電圧安定性、周波数維持などの制約で決まる。例えば、A電力会社からB電力会社に対して連系線を通じて100万kWの電力を送電する際に、通常2回線で運用されている送電線の1回線に事故があって送電できなくなった場合を想定する(これを、N-1基準という)。この事故により、瞬間的に送電量が50万kWになることで、系統内の需給バランスに変動が起こる。この変動が許容値を超えていると発電機の緊急停止や負荷遮断などが起こり、連鎖的に大規模停電などを引き起こしてしまう。こういった事故を防ぐために、送電線の熱容量だけでなく、連系線で接続されるそれぞれの系統の許容値により連系線の送電量に制約をかけている。これを、「運用容量」という。

 日本での地域間連系線強化が課題となっている代表的なものは、東西連系設備である。これは西日本の60Hzと東日本の50Hzという異なる周波数の系統を接続する周波数変換設備と接続される送電線で構成されている。周波数変換の仕組みは、サイリスタ素子を多数組み合わせたサイリスタバルブを用いて、交流の電気を一旦直流に整流し、サイリスタのスイッチング動作により別の周波数の交流へと変換するものである。

 このサイリスタバルブを増設し、周波数変換能力を増やすとともに、東西それぞれの系統に接続する連系送電線の本数を増やすなどして、東西連系を強化する計画がある。2013年2月現在、日本の東西連系容量は120万kW(2013年2月に103.5万kWから120万kWへの増強が完了)だが、2020年までに210万kWまで増強する計画となっている。

 周波数が同じ地域間では、多くの場合、そのまま送電線で接続し、交流で連系されている。交流連系の場合は設備が単純で済むが、周波数の擾乱の影響が波及しやすいなどのデメリットもあり、いくつかの地域間では、直流連系が行われている。

 直流連系のメリットは、以下のようなものがある。

(1)送電ケーブルの本数が交流より少ないため送電設備の建設費が安価
(2)交流では長距離送電で無効電力が生じ、送電容量の低下を招くが、直流連系により解消できる
(3)連系相手の系統での周波数擾乱や事故時の電流を防ぐことができる

 日本では、北海道~本州間および紀伊半島~四国間で直流送電により連系されている。仕組みは、周波数変換所と同様にサイリスタバルブで交流を直流に変換し、長距離の直流送電ケーブルで送電し、反対側で交流に変換する。中部電力と北陸電力は、南福光連系所で直流連系されている。これは、中部と関西、関西と北陸はそれぞれ交流で連系されているため、中部と北陸を交流で接続すると、ループ状になって制御が難しくなるため、直流で連系されている。周波数変換所と同様、1カ所にサイリスタバルブを二つ置き、交流-直流-交流と変換して連系しており、設備が背中合わせになっている様子からBTB(Back to Back)と呼ばれている。

地域間連系の仕組み
地域間連系の仕組み