予備力とは、予想される最大電力需要に対して、さらにどれくらい発電能力の余力があるかを表すものである。対象とする時間間隔により、以下の3種類がある。

予備力の種類
予備力の種類対応する時間対応設備例
待機予備力時間単位水力発電、火力発電
運転予備力分単位水力発電、ガスタービン発電
瞬動予備力瞬時~秒単位ガバナフリー運転

予備力と需給バランス
 
計画時よりも需要が伸びたときには予備力を活用する。
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待機予備力

 電力会社は、毎日、電力需要の量とパターン(何時ごろに、どれくらい電気が使われるか)を予測し、それに合わせて発電所ごとの出力パターン(何時ごろに、どの発電所をどれくらいの出力で動かすか)を計画する。この際、突発的な事象(設備故障による急な発電量低下や、急激な気温変化による需要変化など)に対応できるように、すべての発電所をフル出力にせず、いくつかの発電所で出力に余裕のある状態にしておいたり、いつでも起動できる発電所を決めて、これを待機予備力として確保しておく。予備力の適正水準は、電力会社に蓄積されている需要予測と実績に関する膨大なデータや設備故障率などを勘案しておおむね10%前後に電力会社が決めている。

 予備力は、需要の急増や供給の突発的低下に対して、発電所を稼働させたり発電出力を増加させたりして供給を増やして需給バランスを維持するためのものであり、「事業者がコントロールできる」ことが大前提となる。したがって、事業者が発電量をコントロールできない太陽光発電や風力発電は、予備力として算入できないことになる(正確には、「電気を捨てる」ことで発電量を減らすコントロールは可能だが、発電量を増やすコントロールは不可能)。

 最大需要量、予備力、発電設備容量を単純化すると以下のような関係になり、発電設備容量と最大需要量の差が小さくなると、適正な予備力を確保できず、突発的な需要増大や設備事故の供給低下の際に停電を起こす可能性が高くなる。

発電設備容量(フル出力) > 最大需要量+予備力 > 最大需要量

運転予備力

 運転予備力は、待機予備力用の発電機が立ち上がり、電力系統に接続できるまでの間の需給バランスを維持するためのものである。おおむね10分以内に起動から負荷接続までが可能な発電機によって確保される予備力である。

瞬動予備力

 瞬動予備力は、おおむね10秒以内の極短期の周波数変動に対して即座に対応できる予備力である。発電機の回転調整装置(ガバナ)に負荷制限を設定せず、周波数の変動に応じて自由にガバナを動かし、発電機の出力を増減させるガバナフリー運転などで対応している。

供給予備力

 上記のような短期の予備力のほかに、長期需要見通しに対応する供給予備力がある。電気事業者は、毎年、需要の見通しや発電設備の長期停止などを勘案して、発電所の運用や新規発電所の開発などを計画し、供給計画として経済産業大臣に届け出ている(電気事業法第29条)。供給計画では、最大需要見通しに対して供給力にどの程度の余裕があるかを示すのが供給予備力となる。

 正確な定義では、供給予備力は「無事故時の供給能力(発電所の事故停止などが無い状況での供給能力)」と「最大3日間平均需要(ある月の電力需要最大値の上位3日を平均し、その月の最大需要としたもの)」の差分となる。「最大3日平均需要」に対して、適切な供給予備力を確保して供給計画を策定しているとも言える。需要見通しに対して供給予備力が確保できなければ、発電所の新設・増設などを計画する必要がある。