光学方式は,パソコンやデジタル・サイネージのような大画面でマルチタッチが実現可能な方式として,にわかに注目を集めている。透過率が非常に高いため,ディスプレイの鮮明な映像表示品質を損なわずに済む。また,専用ペンなどの特別なポインティング・デバイスを必要としない。キャリブレーション・ドリフトと呼ぶ位置ズレもなく,表面を傷つけるような行為に対する耐久性も高い。

NextWindow社の光学式タッチ・パネル

 光学方式タッチ・パネルの主な構成部品は,赤外線の光源とカメラ,そして反射材である。液晶画面の角に設置した光源から,画面表面に平行な方向に赤外光を出す。赤外光は,画面周囲の4辺に取り付けた反射材で反射され,その反射光をカメラで受光する。画面上に指がタッチしている状態とタッチしていない状態とでは,指による散乱のために赤外光の進む方向が変化する。この違いを利用して,指の位置を検出する。

 この光学方式タッチ・パネルで急成長しているのがニュージーランドNextWindow社である。米国の大手会計事務所「Deloitte Touche」によると,2009年度の売上高は,前年度の6倍にも達したという。2010年3月には,アジアにあるタッチ・パネルの製造拠点の生産能力を従来の2倍に増強した。マルチタッチ入力機能に対応するOS「Windows 7」の普及など,タッチ・パネル搭載パソコンの需要の拡大に対応したとしている。同社は,米Hewlett-Packard Co.(HP),米Dell Inc.,NEC,ソニー,ドイツMedion社といった大手パソコン・メーカーを顧客に持ち,OEM(original equipment manufacturer)またはODM(original design manufacturer)としてタッチ・パネルを供給している。「Windows7」のマルチタッチ対応が,事業の追い風になっているとする。同社は,デジタル・サイネージ用途の製品開発にも積極的であり,120型まで対応するタッチ・パネルを既に製品化している。

 光学方式にはこのほか,「赤外線方式」と呼ばれる伝統的な方式がよく使われている。これは,赤外線の発光ダイオード(LED)をパネルのX方向とY方向に並べ,これらに対向するように光学センサを並べた構造を持つ。赤外線の網目の中を人がタッチすると,そこだけ影が出来るために場所を見つけることができる。キオスク端末やPOS端末,ATM,大型ディスプレイなどの用途に使われている。