裸眼式とは,メガネを使わずに3次元(3D)映像を視聴するものを指す。富士フイルムのデジタル・カメラや東芝が2010年12月に発売する液晶テレビ,任天堂が2011年2月に発売する携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」など,裸眼式ディスプレイを採用する例は増えてきた。

「レンチキュラ・レンズ」方式の仕組み

 映像が3Dに見えるためには重要な要素が二つある。それが,この運動視差と「両眼視差」だ。運動視差は,歩いたり首を動かしたりしながら映像を見た場合,目に映る像が実体を見た場合と同様に,見る角度に応じて変化していくことを指す。一方,両眼視差は,左右の目で物体を見たときに,左右の目に映る映像の違いや目の角度の違いを脳が認識して,映像に奥行きを感じる効果である。メガネ式には両眼視差はあるが,運動視差がない。運動視差がない場合は,見る位置を多少移動しても,同じ角度から見た映像が見え続けることになる。これに対し,裸眼式3Dディスプレイの多くは運動視差を実現している。

 映像に運動視差を持たせる方法はいくつかある。一つは,映像の撮影時に最低でも3台以上,実際にはできるだけ多数のカメラを,さまざまな方向に配置して使うことである。こうすると,映像を見る人の目の位置が移動したときに,それに応じた方向の映像を目に映せる。より自然な3D映像が見られるようになる。

 裸眼式は,レンチキュラ・レンズなどを1次元に並べる「多眼式」,2次元に並べる「インテグラル方式」に分かれる。多眼式は,カメラを水平方向に並べて撮影した映像に対応するもの。これに対してインテグラル方式は,カメラを水平方向および垂直方向に並べて撮影した映像に対応するもの。空間に像を結像させることができ,ホログラフィとともに空間像再生型の一種である。