青色LEDや近紫外LEDといったLEDでは,白色光などLEDチップそのものの発光色以外の光を得るために蛍光体を使う。白色LEDを構成するために青色LEDチップと組み合わせる蛍光体としては,黄色蛍光体,黄色蛍光体と赤色蛍光体,緑色蛍光体と赤色蛍光体などを使う。蛍光体材料には,YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系,TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)系,サイアロン系,BOS(バリウム・オルソシリケート)系などがある。

 白色LEDを青色LEDチップと蛍光体で構成するとき,(1)蛍光体を樹脂材料に混ぜ合わせて青色LEDチップを覆う,(2)蛍光体を混ぜ合わせたシートを青色LEDチップに載せる,(3)青色LEDチップの発光面に蛍光体を直接塗布する,といった手法がある。最も採用例が多いのが(1)である。

 最近注目を集めているのが,(3)である。LEDチップに直接蛍光体を塗布する構造にすると,LEDチップ表面部分にしか蛍光体が存在しなくなる。このため,チップ表面部分を通過した後の光は蛍光体で乱反射することがない。加えて,青色と黄色の光を同一面から放射する。特に,レンズを組み合わせた際にきれいな配光が得られる,などの利点がある。この方法はドイツOSRAM Opto SemiconductorsGmbHなどが採用している。

 従来はLEDチップをパッケージに収める際にLEDチップの表面に取り付ける透明のシリコーン樹脂などに蛍光体を混ぜ込む方法を採っていた。この方法では,蛍光体によって波長を変換された光が,他の蛍光体に当たって乱反射する。この乱反射を繰り返すうちに光が減衰してしまう問題があった。

蛍光体での光の乱反射を抑制
蛍光体での光の乱反射を抑制
蛍光体をチップに直接塗布する構造に変更する方法と,従来構造のままにして蛍光体の粒子の大きさなどを工夫する方法を比較した。