LEDや半導体レーザなどの発光部分となる半導体層は,基板の上に結晶成長させる。用いる基板はLEDの発光波長によって使い分ける。青色LEDや白色LEDなどGaN系半導体材料を使うLEDチップであればサファイアやSiC,Siなどを,赤色LEDといったAlInGaP系であればGaAsなどを用いる。

 LEDの発光波長によって用いる基板が異なる理由は,LEDの発光部分となる半導体結晶の格子定数に,なるべく近い格子定数を持つ安価な基板材料を選ぶためである。こうすることで格子定数の違い(格子不整合)を小さくし,発光の妨げとなる結晶欠陥などを半導体層中で発生させにくくする。かつLEDチップの単価を下げる。なお,青紫色半導体レーザのように電流密度や光の出力密度が大きいデバイスでは,高価なGaN基板を用いる。GaN基板は,一部の青色LEDにも使われる。

 近年,LEDチップから取り出せる光を多くするため,基板上に半導体結晶層を形成した後に,基板を別の基板に張り替えるといった技術が実用化されている。別基板と張り合わせる際,半導体結晶層との界面に光を反射する層を設ける。反射層は,発光層から基板側に向かう光を反射させてLED表面側に取り出す効果がある。赤色LEDで採用例があるほか,最近では青色LEDなどGaN系半導体を用いるLEDチップにも採用が広まってきた。GaN系半導体によるLEDでは,基板を張り替えずにはがした状態にする手法もある。

 これらの手法は,外形寸法が大きなLEDチップで有効である。大型チップは,チップ内で発生した光がチップ外に出るまでの光路長が長くなり,その過程で光が減衰してしまう問題があるからだ。この問題を基板の張り替えによって解決できるとする。

基板剥離方法の例
基板剥離方法の例
OSRAM Opto社の場合,サファイア基板上にGaN系結晶層を形成,金属反射膜,続いて支持基板となるGeウエハーを張り付ける。その後,レーザ光照射によってGaN系結晶層とサファイア基板の界面部分を溶かし,サファイア基板をはがす。