ドループ現象とは,チップに大電力を投入するとLEDの発光効率が低下する現象である。単位光束当たりのコスト削減に寄与する技術として,LED各社が注力しているのが,ドループ現象の抑制である。この現象を抑制できれば,同じチップを使いながら,大電力を投入して光束を増やせる。このため,一定の光束を得るためのチップ数を減らし,単位光束当たりコストを削減できる。

  このドループ現象の抑制は,以前から米Philips LumiledsLighting Co.などが熱心に取り組んでいた。そして現在では,日亜化学工業やドイツOSRAM Opto Semiconductors GmbHなど多くのLEDメーカーが注力するようになった。LED各社は,投入電流で1A,投入電力で3Wといった具合に,ドループ現象が顕著になる電流や電力の領域を,従来に比べて約3倍に引き上げようとしている。

  LED各社とも,ドループ現象の発生メカニズムやその抑制方法の詳細を明らかにしない。しかし,チップの発熱や電流集中など,ドループ現象と関連するパラメータが複数あるとの指摘が出ている。例えば,大電力を投入すると,チップからの光の発生量が増えるとともに発熱も増える。この発熱がチップの内部量子効率を悪化させて,ドループ現象を引き起こすことが考えられる。このため,ドループ現象の抑制には,放熱性の高いパッケージ構造を採用して,大電力を投入してもチップの温度が上昇しないようにする工夫が有効とみるLEDメーカーが複数ある。また,LEDチップ内を流れる電流密度が大きくなると,ドループ現象が起きやすくなるという指摘もある。

“ドループ現象”を抑制
“ドループ現象”を抑制
単位光束当たりのコスト削減手段としてLED 各社が取り組みを強化しているのが,“ドループ現象”の抑制である。