緑色の波長帯の最適材料はない
緑色の波長帯の最適材料はない
InGaNとAlInGaPともに,緑色の波長帯では外部量子効率が大きく落ちてしまう。

 緑色に発光するダイオードのこと。発光波長の中心は560nm前後である。イルミネーションやインジケーター,LEDディスプレイなどの光源,液晶パネルのバックライト光源などに使われる。

 緑色LEDは,赤色LEDや青色LEDに比べ,改善する余地は大きいとされる。LEDディスプレイや液晶パネルのバックライト光源を赤色LEDと緑色LED,青色LEDを組み合わせて構成する場合,輝度が高く,ホワイト・バランスが取れた白色を作るためには,人間の視感度を考慮してRGBのLEDの光量を約3対6対1あるいは約3対7対1の割合にする。緑色LEDの明るさが足りないため,多くの緑色LEDを使って出力を高めねばならない。緑色LEDで主に使われる材料のGaN系半導体は,青色LEDに使う場合に比べて緑色LEDに使う方が効率は低く,同じ電力を投入しても光出力が弱い。

 こうした状態に今,変化が訪れている。国内外の大学やLEDチップ・メーカーなどが,GaN結晶の成長面を従来と変えることで効率を大幅に高める研究に取り組み始めた。GaN系半導体の結晶面を変えれば,緑色LEDの効率を2倍以上に高められる可能性があるためだ。

 現在販売されているGaN系半導体の緑色LEDの効率を低下させている原因は,主にピエゾ電界である。ピエゾ電界とは,結晶構造の歪みによって生じた圧電分極によって発生する電界のこと。緑色LEDの市販品では,GaN結晶の極性面であるc面(0001)を成長面とし,その法線方向(c軸)を成長軸としてGaN系半導体層などを積層している。成長軸を変更して圧電分極を弱め,緑色LEDを作る研究が
盛んになっている。