人の目に見える光「可視光」を利用して情報を伝達する通信技術。主に照明機器や信号機などの表示機器,自動車の灯具などのLEDを搭載した機器が発する可視光を利用し,その周波数を変調したり,点滅させたりすることによりデータを送信する。無線通信を利用する場合に必要となる周波数割り当ての問題がないという利点がある。通信速度は,蛍光灯に比べてLEDのほうがはるかに高速になる。

 実用化に向け,「可視光通信コンソーシアム(VLCC:Visual LightCommunications Consortium)」が2003年に発足している。現在,NTTドコモといった通信事業者,NECやパナソニック電工,東芝,シャープなどの機器メーカー,NHKなどが名を連ねる。

  2005年には,国土交通省が関西国際空港で,空港到着から搭乗までの待ち時間における利用を想定した可視光通信の実証実験を行った。国土交通省のほかに,松下電器産業(現・パナソニック)や松下電工(現・パナソニック電工),NTTドコモ,中川研究所,日本航空が参加した。発表資料によれば,蛍光灯で10kビット/秒,LEDで数十Mビット/秒での通信が可能とする。

  2008年には,イメージ・センサを受信機として,灯台や交通信号機のLEDを利用した可視光通信の実験に成功したという発表もあった。灯台からの光に情報を載せた場合の伝送速度は通信距離2kmにおいて1022ビット/秒,1kmで1200ビット/秒を記録した。この時達成した2kmは当時,広く拡散する光源を用いた空間光通信としては世界最長距離という。この実験は,千葉県の九十九里浜において海上保安庁,カシオ計算機,東芝が参加する「灯台サブプロジェクト」の一環で行われた。

ロー・ビームに白色LEDを5個使用
発光場所が明確な可視光通信
可視光通信は大きく四つの利点を持つ。第1に,可視光を使って位置を検出すると,位置精度の高さは電波では絶対に超えることのないほど高いこと。第2に,高速伝送を安価に実現できること。第3に,照明機器という既存のインフラを有効に利用できること。第4に,光を発する場所や進行する方向が見えるので,情報がどこまで行くのか,どの方向から来たのかはっきりすること。慶応義塾大学の資料を基に本誌が作成。