厚さ10mm以下の薄い携帯電話機の発売が相次いでいる。こうした携帯機器の薄型化や小型化に威力を発揮するのが,LSIや受動部品をプリント基板に内蔵する部品内蔵基板である。海外では米Motorola,Inc.が1999年から同社の携帯電話機に利用してきたが,日本でも携帯機器への搭載が始まった。2007年1月に東京で開催された実装関連の展示会では,携帯機器向けに量産が始まった部品内蔵基板の展示が相次いだ(図1)。「ここへ来て搭載の検討を始める機器メーカーが増えている」(複数のプリント基板メーカーの説明員)と言う。

携帯電話機や腕時計に

 部品内蔵基板には,内蔵する部品や内蔵手法によっていくつかの種類がある。内蔵する部品としては,既存の受動部品やLSIのほかに,内蔵用の薄い部品,印刷などで形成する膜素子などがある。内蔵手法としては,あらかじめ開けた穴に部品を埋め込む方法と,部品を配置した後に基板積層時に材料を押し当てて埋める方法などがある。

 いずれの手法でも,プリント基板の表面に実装している受動部品やLSIを基板内部に埋め込むことで基板面積を削減したり,部品間の配線距離を短縮して高周波特性を改善できる利点がある。これらに加えて膜素子では,複数の素子を一括形成できるために製造コスト削減の効果も期待できる。

 2007年1月の展示会では,カシオ計算機が,同社の腕時計に搭載された部品内蔵基板と,国内の携帯電話機に採用された村田製作所の地上デジタル・テレビ受信用モジュールを展示していた。いずれもカシオ計算機と日本シイエムケイが開発したパッケージ技術「EWLP(embedded wafer level pack-age)」を利用してLSIを一つ内蔵している。このほか,受動部品を内蔵した基板を2006年4月に量産済みの大日本印刷は,LSIと受動部品の両方を埋め込んだ部品内蔵基板を展示した


図1●携帯機器への採用が相次ぐ腕時計
(a)や携帯電話機(b)などの携帯機器向けに,LSIを内蔵する部品内蔵基板の量産が始まった。大日本印刷は2008年にLSIと受動部品の両方を内蔵する部品内蔵基板の量産を開始する予定である(c)。