高分子系のPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ。過電流や過熱対策用の保護素子に用いられており,リセットできる自己復旧型のヒューズとして使われる。

 PTCは温度が上がると抵抗値が上昇する「正温度特性」を持っている。そのため,過電流が流れたときの発熱などによる過熱時に,ポリマPTCの抵抗値は上昇し,回路電流を制限して電流が流れないようになる。具体的には,導電性の粉体を混ぜ込んだ高分子の膜を2枚の電極箔で挟み,電極にリード端子を付けた構造になっている。定常状態では高分子中に分散する導電性の粉体を通じて電気が流れるため,導電性を持つ。高温になると高分子が熱膨張することで導電性が失われ,抵抗値が上がる。

 ポリマPTCが高抵抗になり,回路に流れる電流を制限している状態を「トリップする」という。一度トリップしても,電圧を十分に下げたり,電源を切って素子の温度を下げたりすれば,抵抗値は再び下がる。抵抗が元に戻るので,ヒューズなどの過電流保護素子のような交換は必要ない。

 保持電流(HOLDなどと表記)は,ポリマPTCがトリップしないで流すことができる最大電流。トリップ電流は,ポリマPTCが動作して高抵抗となる場合の最小電流。トリップ時間は回路に過電流が流れてからポリマPTCがトリップして電流を遮断するまでの時間。トリップ時間が比較的長く,サージ電流や電源を入れる際の突入電流ではトリップしない。