tire pressure monitoring system

 2000年に米国で起きた米Bridgestone/Firestone社のタイヤ剥離問題は記憶に新しい。米Ford Motor社のSUV「Explorer」に装着したタイヤのトレッドが高速走行時に剥離し,横転事故の原因になると社会的問題になった。原因はタイヤなのか,車両にあったのかは決着がついていないが,タイヤの空気圧不足が一因と指摘されている。この問題をきっかけに,自動車の安全性に関する規制「TREAD法(Transportation Recall Enhancement Accountability and Document Act)」が成立し,タイヤの空気圧不足を警告する装置(TPMS:tire pressure monitoring system)の装着が義務付けられた。最新のルールによると2005年10月に20%,2006年9月に70%と段階的な装着義務付けを経て,2007年9月から米国で販売する車両はすべて,TPMSを装着しなくてはならない。

直接式と間接式

 TPMSには「直接式」と「間接式」がある。直接式はタイヤのバルブと一体となった装置(送信機)をタイヤに内蔵して,空気圧と温度を計測する(図1)。間接式は,ABS用の車輪速センサを使い,減圧することでタイヤの半径が変わることを回転数の違いとして検知する。

矢崎総業のアクティブ方式有機ELパネル
図1●TPMS送信機
写真は太平洋工業製。現在ではバルブ部と一体化しているタイプが主流。

 今後のTPMS市場の大勢を占めると予測されているのが直接式だ。直接式TPMSを搭載した大衆車の場合は,4輪のいずれかが減圧した時点で運転者にランプなどで知らせる。上級車種の場合は,どのタイヤが減圧しているか,位置とともに表示する。さらに高級車では,それぞれのタイヤの圧力を数値で表示するという違いがある。

 ここで問題になるのが,位置を検知する方法だ。高級車では車輪の近くに125kHzのLF波(低周波)送信機を設置し,受信のタイミングを測ることで位置を認識している。このような装置がないとタイヤをローテーションした場合に,どのタイヤの信号なのかが分からなくなってしまう(図2)。

送信機で位置を検知
送信機で位置を検知
ドイツBeru社の製品。バンド状の部品が位置検出用の送信機で,ホイール・ハウスなどに取り付ける。

 間接式は1997年から採用が始まっており,ランフラット・タイヤを多く採り入れているドイツBMW社「5シリーズ」「7シリーズ」など,これまでに150万台以上の搭載実績がある。ABSを装着する車両であればハードウエアの追加が必要ないため,コストが安いというのが特徴だ。ちなみに日本では,乗り心地に影響することやコスト高などの影響で,ランフラット・タイヤの採用車種は限られている。そのため間接式TPMSを採用した例も少ない。

 間接式の問題点は,相対的な圧力は分かるが空気圧が何Paという絶対値が分からないことだ。さらに現状では,4輪の圧力が同時に減った場合も分からない。これまでBMWなどに採用されたものは1~3輪の30%の減圧を警報するというもの。TREAD法では,空気圧25%の減圧を20分以内に検出することが求められている。また,4輪同時の減圧も警告しなくてはならない。

 ただしTREAD法では,実現手法を直接式に限定しているわけではない。間接式を手掛ける住友ゴム工業では,間接式の改良を続けている。まずは4輪の減圧を検知するために「荷重感度法」を研究中だ。空気圧が減っているタイヤは,荷重がかかった際の変化量が少ない(最初からたわんでいるため)ことに注目した。旋回中の横方向の加速度に対して,左右のタイヤの動きを調べると,荷重に対する左右輪の速度比から,外形の変化が検知でき,4輪のタイヤの減圧が分かるという。