HUD : head-up display

 クルマの情報化が進むにつれ,ドライバーが運転中にインスツルメンツ・パネル(インパネ)を見る頻度が増加している。ドライバーの視線移動を減らすために,ドイツBMW社が開発を進めてきたデバイスの一つがヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)である。すでに「M5」のオプションとして搭載されている。

 このヘッドアップ・ディスプレイは,フロント・ウインドウにカーナビの情報を投影するもの(図1)。通常のカーナビやタコメータ上の表示と比べて視線移動を減らせるメリットがある。投影する情報は実際にはフロント・ウインドウに映っているのだが,ドライバーには,あたかも道路上に表示しているかのように映るよう工夫している。車両前方との遠近差を少なくすることでドライバーの視認性向上を狙う。

 HUD自体は古くから研究されてきた技術だが,表示を大きくすると外界が見にくくなり,小さくすると表示が見にくくなるほか,速度以外の様々な情報まで表示に盛り込みにくいという難点がある。加えて,昼間の外界が明るいときに,しかも様々な色を持つ景色の中を走行すると表示が見にくくなるという問題もあった。BMWはこうした課題を,カーナビの情報表示に用途を絞ることによって解決した。

カーナビの情報をフロント・ウインドウに表示するBMWのヘッドアップ・ディスプレイ
図1●カーナビの情報をフロント・ウインドウに表示するBMWのヘッドアップ・ディスプレイ