Li ion rechargeable battery, capacitor

 Liイオン2次電池は,負極に炭素系材料,正極にLi(リチウム)を含有する複合酸化物を使った2次電池で,軽いLiを使うことと,単セル当たりの電圧がNi(ニッケル)水素2次電池の3倍に当たる3.6Vと高いことから,150Wh/kg~200Wh/kgという非常に高い質量エネルギー密度を実現できる。

 ちなみに従来の鉛(Pb)2次電池のエネルギー密度は30Wh/kg程度,トヨタ自動車の「プリウス」が採用したNi水素2次電池でも80Wh/kg程度である。このため,電気自動車やハイブリッド車の次世代2次電池の本命として活発に開発が進められている(図1)。


図1 急速充電可能なENAXの大型Liイオン2次電池

 Liイオン2次電池は,Ni-Cd電池やNi水素電池のように,浅い充放電を繰り返すと容量が減少してしまう,いわゆるメモリ効果がない。また耐久性が高いのも特徴で,充放電を繰り返すサイクル特性は500回以上,使い方によっては1000回以上が可能である。最近では,低コスト化を目的に,正極に高コストなCo(コバルト)を使わず,LiMnO2を採用したLiイオン2次電池も開発されている。

急速に容量を増すキャパシタ

 燃料電池自動車やハイブリッド車の補助電源として,最近急速に浮上してきたのがキャパシタである(図2)。キャパシタは,2枚の電極をわずかな間を空けて向かい合わせたもの。電極間に電圧をかけると,電極の間に電荷が蓄えられるという現象を利用した蓄電装置だ。キャパシタの中でも,現在自動車用として応用が検討されているのは電気2重層キャパシタと呼ばれるタイプである。


図2 パワーシステムが開発したキャパシタ

 電気2重層とは,電極と電解液の界面で正・負の電荷が非常に短い間隔を隔てて対向し配列する現象をいう。活性炭のように表面積の大きな物質を電極として使うと,小さい体積の中に非常に大きな電荷を蓄えることができる。

 キャパシタは2次電池と異なり充放電に化学変化を伴わないため,瞬時に充放電が可能で,制動力の回生や,加速アシストなど短時間に大電流を出し入れしたい自動車用途に向くという特徴がある。物理的な現象で充放電を行うため,充放電に伴う劣化もほとんどなく,半永久的に使えるのも利点だ。

 しかしキャパシタの蓄電量は,エネルギー密度で見るとせいぜい1Wh/kg~1.5Wh/kg程度と,Pb(鉛)2次電池の1/20以下にすぎない。このため,これまで自動車の補助電源として検討されることはほとんどなかった。

 ところが最近になって,質量エネルギー密度を50Wh/kg~75Wh/kgに上げられる可能性がある画期的なキャパシタの開発に複数の企業が成功し,自動車の補助電源としてにわかに注目されるようになった。2005年から,まずエネルギー密度を5Wh/kg~10Wh/kg程度に高めたサンプルを,日本電子とパワーシステムが供給し始めている。

 両社がこれほどキャパシタの容量を高めることができたのは,内部抵抗の増加を許容するキャパシタの構造や,キャパシタを最適の充放電状態に保つ電子回路,さらに活性炭の表面積を大幅に増加させることができる電界賦活と呼ばれる技術の開発に成功したため。

 ただし,最近では,東芝が1分で充電可能なLiイオン2次電池の開発を発表するなど,キャパシタの特徴である充放電時間の短さを2次電池で実現する技術も登場している。次世代のハイブリッド車や電気自動車用電源の本命争いは,今後ますます激化しそうだ。