カメラで撮影した画像のブレを自動的に安定化させる技術。手ブレの量を検出して,撮影した画像のブレを補正する。1988年に初めて民生用ビデオ・カメラに搭載され,1990年代に入って普及価格帯のビデオ・カメラや一眼レフ・カメラ,デジタル・カメラのコンパクト機などに広まった。現在は自動露出や自動焦点と並んで,カメラの基本機能の1つとなりつつある。

 主に光学式と電子式の2つの方法がある。それぞれ手ブレの検出用法や補正方法が異なる。光学式は,ジャイロスコープ(角速度センサ)で2軸分の角速度を測定し,検出した手ブレ量に応じて撮影中にレンズなどの光学機構を調整して補正する。静止画と動画のいずれも補正できる優位性があるものの,ジャイロや機構部品などが必要となるため,部品コストがかさみがちとされている。鏡筒内にレンズを動かす機構部品を備えるので,鏡筒は通常よりも大きくなる。

電子式は,いったん撮影した画像データに信号処理を施して手ブレのない画像を生成する。用途に応じていくつかの手法が実用化されている。ビデオ・カメラなど動画の手ブレを補正する用途では,画像データのフレーム間の動き検出から手ブレ量を算出し,ブレ量に応じて画像を切り出す範囲を調整してブレのない動画を作り出す。この手法は光学式のように機構部品がなく小型化しやすい。ただし撮影した画像の一部を切り出すため,実効的な画素数が少なくなるほか,静止画の手ブレ補正には適用できない。静止画に有効な手ブレ補正技術には,平均化処理する手法が実用化している。1回のシャッター・タイミングにおいて,高速のシャッター・スピードで手ブレのない画像を複数枚撮影し,特徴点抽出などから位置合わせをした後,平均化処理して1枚に合成する。

 手ブレ補正技術はここで紹介したほかにも,いくつか存在する。例えば,イメージ・センサ・シフト方式。光学式においてレンズを動かす代わりに,撮像素子を動かして光軸を補正する方法である。手ブレ量の検出にジャイロスコープを使い,動画のブレ補正に信号処理を使う方法もある。

図 手ブレ検出機能の原理図
図 手ブレ検出機能の原理図 (日経エレクトロニクス1990年6月11日号より抜粋)