松下電器産業が開発したデジタル民生機器の開発プラットフォーム。2004年秋に同社が発表した。いったん開発したソフトウエアをさまざまな商品分野の製品で共用するのが目的(図1)。例えば携帯電話機,デジタル・カメラ,カーナビ,デジタル・テレビや光ディスク録画機など,機器間の壁を超えて,ソフトウエアの相互利用を行う。背景にはソフトウエア規模の増大による,開発負荷の上昇がある。

 UniPhierは,ハードウエアであるメディア・プロセサと,その上で動作するソフトウエア,コンパイラやデバッガなどの開発ツールなどから成る。このメディア・プロセサをデジタル民生機器に搭載するSoC(system on a chip)に共通のハードウエアとして組み込む。

 UniPhierでは,ソフトウエアを共用するために,当該ソフトウエアを実行するメディア・エンジンの基本アーキテクチャを,想定する商品分野によらず統一している(図2)。メディア・エンジンは,システム制御などを実行する「命令並列プロセッサ」,動画処理などを担当する「データ並列プロセッサ」およびマルチメディア処理を補助するアクセラレータ回路「ハードエンジン」の回路ブロックから成っている。

 このうちシステム制御などを実行する命令並列プロセッサは,すべてのメディア・エンジンに同じものを用いる。マルチメディア・データの処理を意図して設計してあり,C/C++言語で記述したプログラムをコンパイルするだけで利用できる。命令並列プロセッサの実行ユニットの数は,用途を問わず3個にしている。

 データ並列プロセッサは,画素データなどの並列処理を担う。商品分野によって必要となるディスプレイの画素数が異なることなどを考慮して,データ並列プロセッサについては演算器の数を用途に合わせて柔軟に変えられるようにしてある。ハードエンジンは,当面は各機器部門が有するハードワイヤド論理回路の設計資産などを利用する方向。

 松下電器産業は,2005年10月開催の「CEATEC JAPAN 2005」で,UniPhierの搭載機器を実演した。NTTドコモの携帯電話機「FOMA P901iTV」や,松下電器産業のビデオ・カメラ「SDR-S1000」,トヨタ自動車のカーナビ「NHDN-W55G」への採用例などを展示していた。

図1 用途を超えてソフトウエアを相互利用
図1 用途を超えてソフトウエアを相互利用

図2 新開発したメディア・エンジンの構成
図2 新開発したメディア・エンジンの構成 (図1,図2とも日経エレクトロニクス2004年9月13日号より抜粋)