solid oxide fuel cell

 セラミックス系の固体電解質を使う燃料電池。SOFC(solid oxide fuel cell)とも呼ぶ。作動温度が+1000℃程度と高いため,反応にPt(白金)のように高価な触媒を利用せずに済む。出力密度はダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)などの固体高分子型燃料電池(PEFC)よりも高い。発電効率は45%以上で,PEFCの同34%前後に比べて高い。燃料に水素以外の都市ガスやバイオマス・ガスなど炭化水素系全般をそのまま利用できる。

 ただし,作動温度が高いため,起動/停止の繰り返しが苦手という課題がある。再起動するまでに時間がかかるほか,停止時に急速に冷える部分とそうでない部分の熱応力により,セルが破損する恐れがある。用途として家庭用発電装置などが想定されているが,夜間など電力をあまり必要としないときに,出力を抑えた部分負荷運転をしながら自律運転できる温度を維持できるかが今後の大きな課題となる。

 作動温度を下げる動きもある。従来の+1000℃からここ数年で+800℃程度にまで下がってきた。+700℃のものも開発されている。作動温度を+700℃まで下げることで,セル周辺の耐熱部品にステンレス鋼を採用できるので,コストを下げられる。従来は特殊な耐熱材料であるNi系耐熱合金を用いており,耐熱部品がコスト高の一因となっていた。さらに作動温度が下がれば,携帯機器にSOFCを搭載できる可能性もある。

 出力密度が高いのは,作動温度が高く固体電解質の抵抗が小さいなどの理由による。PEFCでは固体高分子電解質膜中を水素イオン(H)が移動するが,SOFCではセラミックスで形成した固体電解質中を酸化物イオン(O2-)が移動する。固体電解質として利用するYSZ(イットリア安定化ジルコニア)などの安定化ジルコニア化合物が高温下において,酸化物イオンを自由に通過させやすい性質を利用する。