軟磁性体の材料から構成するシート。軟磁性体が自然共鳴し電磁波を熱エネルギーに変えることで,電磁波がシートを透過したり,反射するのを防ぐ。軟磁性材料には,センダストやパーマロイ,ケイ素鋼板,Fe系アモルファス,Co系アモルファス,ナノグラニュラー膜などがある。デジタル・カメラや携帯電話機,ノート・パソコンのマイクロプロセサやLSI,液晶パネルなどから放射される不要輻射を抑えるといった用途がある。

 不要輻射の根源を抑えるために張る場合と,雑音の影響を受けやすい部分に張る場合がある(図1)。実際の適用として筐体に使った場合は,筐体内での内部干渉と筐体から外に出る不要輻射を防ぐことができる。プリント配線基板では雑音源となるICからの不要輻射を防げるほか,基板間に設置することで他の基板で発生した雑音がもう一方の基板に入射するのを防げる。このほか,基板同士や基板と部品をケーブルでつないだ際のケーブルからの不要輻射を抑制することも可能である。

電磁波吸収シートの使い方
図1 電磁波吸収シートの使い方
2004年8月2日号より抜粋

 電磁波吸収シートによって抑制できる雑音は平均で数dB程度と,大きくはない。しかし,開発の上流にある回路設計でしっかりと雑音対策ができていれば,実際の機器を組み立てた際に想定外の雑音が出てきたとしても多くの場合は数dB程度に抑えることが可能である。この範囲であれば電磁波吸収シートを使って対策できる。

 電磁波吸収シートは外から与えた磁界に対する磁化のしやすさを示す透磁率μ(磁束密度(B)/磁界の強さ(H))を使って,その吸収特性を示す(図2)。基本的に透磁率が大きいほど,磁化しやすい。ただし,磁界の強さが変化したときに磁束密度がその変化に追い付かず位相が遅れる。そこで,透磁率は実数項μ'(磁化されやすさ)と虚数項μ"(位相ずれの大きさ)に分けて,μ=μ'-jμ"で表す。μ'とμ"はいずれも周波数依存性がある。μ"の値が大きいほど,例えば1GHz程度の高周波領域で雑音吸収効果に優れるとされる。逆に,100MHzといった低周波対応の電磁波吸収シートとするには,μ'の大きい材料の開発が必要になる。

透磁率で決まるシートの周波数特性
図2 透磁率で決まるシートの周波数特性
2004年8月2日号より抜粋