媒体の表面に対して垂直の方向に磁性層を磁化させて,信号を記録する方式。面に対して平行に磁化する従来の長手記録方式に比べて熱揺らぎに強く,記録密度を高めやすいといわれる。

 垂直磁気記録の根本的なアイデアは1977年の国際会議「International Magnetics Conference」で初めて発表されたもの。それから30年近い時が経過して,ようやく実用化を迎えることになった。2005年4月~6月期の量産開始を発表している東芝は,その理由について「既存の長手記録方式よりも早く133Gビット/(インチ)2を達成できるメドが立ったから」と説明する。

 従来の長手記録方式は,媒体の表面に対して平行の方向に磁性層を磁化させて,信号を記録する。このため,ビットの境目は反発しあう極同士が向き合うことになり不安定になる。これに対し,媒体の磁化方向が垂直に向く垂直磁気記録は,ビットの境目が吸着しあう極同士が向き合うので,高密度化したときに安定になる(図)。

 垂直磁気記録の利点の1つは,媒体の膜厚を大きくできること。縦長の磁性粒子を使うことで厚みをかせぐことができ,磁性粒子1個当たりの体積を大きくできる。この結果,熱によってデータが消える心配が小さくなる。

垂直磁気記録と長手磁気記録の原理
図 垂直磁気記録と長手磁気記録の原理
(1996年7月1日号より抜粋)