metal-insulator-metal

 金属-絶縁体-金属,つまり絶縁層を金属で挟み込んだ構造をいう。この構造によるキャパシタは,抵抗が小さく高容量密度化が可能になる。半導体の分野では,例えばチップ上におけるストレージ領域を小さくする手法として同構造によるキャパシタが期待を集める。また,無線通信に向けたRF用チップに採用するキャパシタとしても開発が進んでいる。この他,薄型テレビの分野では,アクテイブ・マトリクス駆動するための駆動素子の1つとして,一部の分野でこの構造を使ったダイードが利用されている。

MIMキャパシタを採用したDRAM混載LSIの断面図の例
図 MIMキャパシタを採用したDRAM混載LSIの断面図の例
(NECエレクトロニクスの
2002年12月16日付け発表資料より)

 半導体の分野では,例えばNECが,130nm世代のDRAM混載技術「UX5D」において,DRAMセルの構成材料として,MIM構造のキャパシタを実用化している(図)。キャパシタ絶縁膜(Ta2O5)以外のすべての部分(電極,プラグ,セル・トランジスタ)に金属材料を適用した。従来のDRAMセルは,電極やプラグなどの材料として多結晶Siを使うことが一般的だった。金属材料は多結晶Siに比べて抵抗値が1/10以下であるため,高速動作に適する。NECエレクトロニクスがFull Metal DRAMに用いた金属材料(TiN,W,CoSi2)はすべてCMOS論理LSI技術で使われている材料である。

 なお,同社は,90nmルールのCMOS技術を使ったDRAM混載技術としては,キャパシタ絶縁膜にZrO2を採用した。従来に比べてメモリ・セルの面積を約1/3に小さくできたという。「従来技術のTa2O5に比べてZrO2は比誘電率が25~30と約15%大きいために電荷の蓄積量を多くできる。さらに,バンドギャップがTa2O5よりも大きいのでメモリ・セルのリーク電流を減らせ,キャパシタ絶縁膜を薄くできた。このため,さらに電荷の蓄積量を増やせた」と説明する。

 液晶パネルの分野では,MIMダイオードがTFTと並ぶアクテイブ・マトリクス駆動用の素子として位置づけられる。一般に低コストだが速度は遅くなる。セイコーエプソンのTFDは,このMIMの改良方式である。