whisker

 メッキ皮膜表面に発生するヒゲ状の金属結晶のこと。これが原因となり,隣接する配線が短絡したりすると,信号不良が発生し電子機器が正常に動作しなくなることがある。古くから開発現場の悩みの種であり,例えば1980年代には,電話交換機の筐体裏側のメッキ部で発生するウイスカの対応に苦慮した。このウイスカは時間とともにゆっくり成長し,やがてプリント配線基板上の電子部品の端子に接触して短絡事故を起こしたという。

 最近では,コンピュータ室の床下で発生したウイスカがコンピュータに入り込み,コンピュータが停止するといった事故が起きていることが2002年に表面化した。コンピュータ室はコンピュータの動作に伴う温度上昇を防ぐため,冷たい空気を循環させている。床下の支柱にはZnメッキが施してあり,ここで発生したウイスカがコンピュータ室の空気の循環によって飛散し,コンピュータの内部に入り込んでいた。コンピュータに入り込んだウイスカは配線間を短絡し,その結果,コンピュータが停止するなどの異常が発生することがあった。

 またメッキ部をPbフリー化したフレキシブル基板向けコネクタでもウイスカ問題が顕在化している。ウイスカによる配線間短絡が心配されているのはピッチ幅が1mm未満の狭ピッチ品である。フレキシブル基板をコネクタに嵌合して24時間~48時間後にはウイスカの成長が始まるという。

 Pbフリーのメッキの種類には幾つかあり,この中でウイスカが発生しないのはAu(金)メッキだけである(図)。PDPや複写機のように価格が高い製品の場合,機器メーカーによってはコストが高いものの製品には影響を与えないAuメッキを選択することがあり得る。Sn-BiメッキやSn-Agメッキの場合,ウイスカは発生するものの,それほど成長しない。

Pbの除去で,コネクタにウイスカ問題
図 Pbの除去で,コネクタにウイスカ問題
2004年9月13日号より抜粋)