Point of Production

 日本語で生産時点情報管理と呼ぶ。生産現場には目に見えないところでさまざまなロスがある。それをデータという形で顕在化させ,そのデータに基づいて的確で素早い対策を講じる。POPシステムを導入する狙いはそこにある。

 POPシステムは,単にロットの着手・終了時刻や出来高を管理するバーコードシステムとは異なる。対象としている情報源は,(1)加工や組み立てを行う機械(2)治工具(3)空調機器や熱・電力・水・原材料の供給設備など生産を支援する設備(4)ワーク(5)作業者—と幅広い。これらの情報源から生の情報を吸い上げ,現場管理者にその情報を分かりやすい形で提供し,現場管理者の判断に基づいた指示を現場に伝達するのが,POPシステムの役割である。

 POPシステムでまず重要なことは,これらの情報源から効率良く現場の情報を集めることだ。理想で言えば自動で情報が収集できれば良い。例えば,加工機の制御装置をネットワークに接続し,刻々と変化する制御情報を転送すれば,管理サーバでこれらの情報を管理できる。また各種のセンサを利用することで,材料の投入個数や動作回数などの情報を自動で付け加えられる。

 しかし,古い機械ではネットワークに接続するインタフェースを持たないものもある。このような場合はPOP端末から人手によって各種の情報を入力しなくてはならない。POP端末は人間とのインタフェースとして,POPシステムにおいて中核の役割を担う。

 POP端末は,以前は専用の装置が多かったが,近年ではパソコンベースのものにシフトしてきている。また,無線LANが発達することにより,PDAなどがPOP端末の役割を十分に担えるようになってきている。

 一方,POP端末で吸い上げた1次情報を基に,工程管理,品質管理,稼働管理,保全管理,実績原価管理に不可欠な2次情報を算出し,それらをビジュアルに画面表示したり,各種の帳票類として出力するのがPOPパッケージソフトである。重要な機能は,取得あるいは算出可能な2次情報の種類,モニター機能や帳票類出力機能などで,これらの充実度が選択のポイントとなる。

 ただし,本当に役立つシステムとするには,カスタマイズするケースが一般的なので,ベンダーのコンサルティング力,導入実績,アプリケーション開発ツールなどにも注意が必要。既存の機械・設備を生かすにはベンダーのエンジニアリング力がものをいう。

 このように,一言でPOPシステムといっても応用範囲は広い。近年そのニーズは確実に増えてきている。多品種少量生産化が進み,素直にこの流れに従えば,生産効率や品質が落ちてしまう。これを未然に防ぐためには,生産現場の情報を収集し,そのデータを基にして改善活動を行っていく必要があるからだ。また,顧客要求に従って柔軟に生産計画を変更するためにも,現在の進ちょく状況を正確に把握しなくてはならない。

 また最近では,製品トレーサビリティ(追跡性)が重視されている。トレーサビリティを高めるためには,当然製造履歴を残しておく必要があり,POPシステムが有効な回答となる。

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