電子機器に搭載したLSIや電源回路などで発生した電磁雑音が,その電子機器のほかの機能に悪影響を与える現象を指す。空中に飛び出した放射雑音が原因の場合と,電源/接地層に流入した伝導雑音が原因の場合の両方がある。「機器内EMC(electro-magnetic compatibility)」「イントラEMC」「イントラシステムEMC」と呼ばれることもある。最近,この問題がさまざまな機器で顕在化している。機器の小型化や多機能化が進むにつれて,無線通信回路と情報処理回路を高密度に実装する必要性が高まっていることが理由の一つである。

 例えば携帯電話機では,LSIやDC-DCコンバータ回路などを発生源とする電磁雑音が,無線信号の受信回路に混入してビット誤り率(BER:bit error rate)を増大させ,受信感度が低下するという現象が起きている。このほか,カメラ・モジュールやアプリケーション・プロセサも雑音源になる。

 現在では,携帯電話機以外にも無線通信機能を搭載するさまざまな携帯機器で,自家中毒の問題が顕在化している。例えば,ノート・パソコンや携帯型ゲーム機では,LSIを原因とする電磁雑音がワンセグ・チューナーに悪影響を及ぼし,表示映像が途切れるという現象が発生している。無線通信機能を備える携帯機器だけでなく,最近ではAV家電や白物家電でも問題として認識されつつある。

 一般には,自家中毒の問題を避けるために電磁雑音が発生しやすい部分にコモンモード・チョーク・フィルタを挿入したり,電磁波吸収シートを張るなどの対策を施している。